労働者のキャリアと産業医

2016-12-16

キャリアコンサルタント資格とは

皆様は、キャリアコンサルタントという資格が存在することはご存知でしょうか?

キャリアコンサルティングとは、「興味・適性の明確化や職業生活の振り返りを通じて、職業生活設計の支援や職業の選択、スキルアップについて、意欲の向上を促し、自己決定を後押しする支援」のことを言い、これを行う人のことをキャリアコンサルタントと呼びます。

今年4月より、キャリアコンサルタントが国家資格化されました。

弊社代表産業医(山崎)は、先日行われた第1回キャリアコンサルタント試験に合格し、キャリアコンサルタントとして名簿登録を受けましたのでご報告致します。

 

労働者のキャリアと悩み

一昔前と比べ、現在の日本社会においては、労働者が自らのキャリアについて考え、悩むことが多くなっているのではないでしょうか? 

あくまで一般論でしかありませんが、一昔前には、新卒で入社し定年退職するまでの間、時には興味・経験のない部署への異動を命じられ、時には地方への転勤も命じられ、長時間残業で家族との時間が少ないとしても、それらを甘受し、一つの会社で定年まで勤めあげることが一般的でした。ほとんどの人が、それが普通であり、自分にはそれしか道がないのだと思っていたのです。また専業主婦家庭が多かったこともあり、そのような夫の働き方が可能でもありました。 

それに対して、現在の若者は、各種調査でも明らかになっていますが、「仕事のやりがい」や「仕事の意味」を重視する傾向があります。また、共働き家庭も増え、仕事とプライベートの両立を重視する傾向も、年々強まっています

また、転職市場も拡大し、インターネットを通じて様々な情報を得ることができるようになり、「隣の芝生は青い」ならぬ「自分にはもっと合った仕事がある」「この仕事では自分の能力は生かせない」と感じる労働者も増えているのではないでしょうか。

 

産業医面談の中で感じるキャリアに関する悩み

産業医としてメンタル不調になってしまった労働者の方々と面談する機会も多数頂いておりますが、メンタル不調に至った原因として、キャリアに関することが一因となっているケースも多々見受けられます。

以下、ほんの一例ですが、

 

入社直後~数年:

入社前に自分が思い描いていた仕事内容と、実際の内容が大きく違い、やりがいを感じられない。

 

部下を持つようになったタイミング:

自分は、部下のマネジメントができるタイプの人間ではない。役職を外してもらって、あくまで一プレイヤーとして働きたい。

 

子育て期:

毎日毎日深夜まで残業で、子どもと過ごせる時間がない。もっと家庭を大事にしたい。

仕事が忙しく、家事がほとんどできていない。子どもに申し訳ない。

 

中年期:

今まで自分が築いていたキャリアと全く違う分野へ異動となった。会社は自分を辞めさせたいのか?嫌がらせか?

 

50~60代:

親の介護や、自身の病気と、仕事の両立に関する悩み。

 

というような悩みはよく聞かれます。

 

企業によっても傾向に違いがあり、例えば公務員であれば、おそらく民間との癒着防止等の意味合いもあるのでしょうが全く異なる分野への異動というのが結構あり、地位だけ高くて知識・経験が少ない状態に陥り、経験豊富な部下とのコミュニケーションや指導に悩むといったケースが散見されます。

また、歴史のある企業においては、社員の高齢化が進んでおり、自身の病気や親の介護の問題が多く、新興のIT企業等ではそのような病気や介護の問題は少なく、自身のスキルと会社から求められるスキルのミスマッチ(業界自体の変化のスピードが速いため、労働者に求められるものも次々と変化しやすい)が多いように感じます。

 

産業医としてできること

産業医と面談することで、このような悩みが解決するわけではありませんし、私自身解決できる能力があるとも思っていません(時には、労働者と企業の間に立って話を調整し、解決に至ることもありますが…)。 

ただ、キャリア理論に関する知識が全くのゼロよりかは、多少なりとも持ち合わせていた方が、より充実した産業医面談ができるのではないかと考え、今回の国家資格取得に至りました。例えば、「この人が大切にしている価値観はなんなのだろう」「この人のキャリア・アンカーは何だろう」と考えながら産業医面談を行えば、多少は意味のある面談ができるかも知れません。

 

今後も、今回の資格取得の際に学習した内容や経験を活かし、労働者の方々や企業のお役に立てる産業医活動を行っていきたいと考えています。

 

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