受動喫煙防止と労働災害(特に化学物質過敏症)

2016-08-31

明日から労働衛生週間準備期間です

毎年10月1日~7日は全国労働衛生週間であり、9月はその準備月間となっています。

昭和25年から始まり今年で67回目となる歴史のある活動です。

 

毎年、重点事項は異なりますが、今年の重点事項としては以下の事項が挙げられています。

 

・ストレスチェック制度の確実な実施

・化学物質に関するリスクアセスメントの着実な実施

・受動喫煙防止対策の推進

 

このように重点事項の一つとして、ストレスチェック等と並んで「受動喫煙の防止」が挙げられています。

 

昨年6月から受動喫煙防止が努力義務に

労働安全衛生法が改正され、昨年6月からは職場における受動喫煙の防止が努力義務となっています。

様々な企業で産業医をさせて頂いていますが、オフィスワークを行う労働者にとっては、ビル内禁煙であったり敷地内禁煙であるケースがほとんどですので、受動喫煙がほぼ生じない環境になっていると言えるかもしれません(ただその場合でも、喫煙者の衣服や髪の毛についたタバコの煙による周囲への悪影響は無視できませんが)。

 

しかし、工場や建設現場においては、更衣室の側や皆が通る通路の側などでタバコを自由に吸える状況が残っており、非喫煙者がタバコの煙を吸ってしまう環境が残っているところも多く見受けられます。

 

受動喫煙と健康障害

タバコの煙には有害物質、発がん物質が含まれており、喫煙者は肺がんや脳梗塞・心筋梗塞等になりやすいことは広く知られています。それにも関わらず、タバコを吸い続ける方は、よく産業医面談でも仰ることが多いですが「タバコを止めるくらいなら、吸って早く死んでも本望。」との気持ちがあるのかも知れません。

しかし、たとえ本人が早く死んでも本望だとしても、タバコの煙(副流煙)で他人に迷惑をかけることは避けなければならないと言えるでしょう。

 

副流煙には、喫煙者本人が吸い込む煙よりも、高濃度の有害物質、発がん物質が含まれています。本日、大きく報道されていましたが、国立がん研究センターの研究によると受動喫煙をすることで、非喫煙者の日本人が肺がんになる可能性は約1.3倍に高まり、受動喫煙のリスク評価が「ほぼ確実」から、より明瞭な「確実」に変更されたとのことです。

 

受動喫煙と労働災害

このように、受動喫煙による健康障害は深刻ですが、癌にしろ心筋梗塞にしろ、副流煙を吸ってすぐになるものではありません。通常、数年という単位がかかるでしょう。他の要素(高血圧や肥満など)も絡んできます。ですので、労働災害との関係でいうと、「副流煙を吸ったから肺がん・心筋梗塞になった」等と労働者が主張し国が労災と認めるのはかなりハードルが高いと言えます。

 

一方、癌や心筋梗塞等とは違って、煙への暴露と症状・病気との関係をある程度主張しやすいものとして、化学物質過敏症があります。

化学物質過敏症については、病態、原因、治療法等について明確に確立されたものはないようですが、一般的には、微量の薬物や化学物質の暴露によって様々な健康被害が引き起こされるとする疾病概念を言います。

実際、化学物質過敏症により労災認定されたケース(広島高裁岡山支部判平23.3.31)も存在します。これは、トルエン、キシレン等の有機溶剤のケースですが、タバコの煙についても労災申請されたケースも存在します。

 

(つづく)

 

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