健康診断を確実に受けさせましょう~軽井沢のバス事件に思う~

2016-01-15

連日大きく報道されていますが、軽井沢町のスキーバス事故で14人の方がお亡くなりになり、多数の方が負傷されました。お亡くなりになった方の無念、ご家族のお気持ちを思うと、いたたまれない気持ちでいっぱいです。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。また、負傷された方々の一日も早いご回復をお祈り申しあげます。

 

健康診断を受けさせることは企業の義務です

報道によると、バス会社は労働安全衛生法で定められた健康診断を運転手に受けさせていなかった等の理由で、国土交通省から事故の2日前に道路運送法に基づく行政処分を受けていたとのことです。

労働者に対して年に1回(一定の有害業務従事者等については6か月に1回)健康診断を受けさせるのは企業の義務となっています。

定期健康診断に関する厚労省の調査によると、定期健康診断を実施している事業場(労働者が実際に受けているかどうかは別問題)の割合は、50人以上の事業場においては98%程度と高い数値になっていますが、30人未満の小規模の事業場においては90%、つまり10社に1社は健康診断の機会すら労働者に与えていない状況です。小規模の会社にとっては健診費用が捻出できない等の理由があろうかと思いますが、だからといって健診を受けさせないことが許されるはずはなく、今回の事故のようなことが起これば企業の存亡に直結する大事態となります。かならず健診を受ける機会を労働者に提供しましょう。

一方、受診率(健診を実施している企業の中で、労働者が実際にどれくらい受けたか)を見ると、1000人以上の超大規模の事業場でも85%程度となっています。つまり、会社が健診を受ける機会を用意しても何らかの理由で10人に1~2人は受けていない訳です。企業からすると、「健診を受ける機会は与えている。それなのに受けないのは労働者の勝手であり、会社としての責任は果たしている」と思われるかもしれませんが、万一健診を受けていない労働者が事故を起こした場合、そのような言い訳は通用しません。なぜなら、安衛法上企業に求められているのは「健診を受けさせること」であり、健診を受けない労働者に対しては、何度も勧奨して無理にでも受けさせなければならないのです

 

健康診断を受けることは労働者の義務です

一方、少し意外かもしれませんが、安衛法では労働者にも「健診を受ける義務」を負わせています。よって、企業は健診を受けない労働者に対し、「健診を受けろ!」と業務命令として命じることができるのです。裁判例では、受診拒否に対しては懲戒処分を行うことすら認められています(なお、ストレスチェック制度では労働者に受検義務はありませんので注意して下さい)。よって企業としては「労働者が自分の意思で受けなかったので放っておきました」では済まされず、万一今回のような事故が起きれば企業責任を問われることは不可避です

 

健診を受けさせるだけでは不十分。結果を産業医等にチェックさせましょう

もう一つ気を付けて頂きたいのは、健診を受けさせるだけでは不十分だということです。

健診の結果、異常所見が見られた場合は、企業は就業上の措置について、3か月以内に医師の意見を聴かなければなりません。私が産業医活動を行う中で見聞きしたなかには、産業医が名義貸しである等の理由で、健診だけ受けさせて結果を産業医等にも見せていないケースがままありますが、明らかな安衛法違反であり、今回のような事故が起きれば、これも大問題になりかねません。

必ず、産業医又は産業医がいない場合は地域産業保健センター等に相談し、医師のチェックを入れるようにして下さい。

 

健康診断を行う、労働者に受けさせる、そして結果を医師に見させて意見をもらうことは、健康管理の基本中の基本であり、それすらできていない場合は何らかの事故等が起きると大問題に繋がります。これら一連の健診の流れは、確実に実施することを強くお勧めします。

 

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