【雑感】ある社労士の問題ブログに関して

2015-12-08

とある社労士の問題ブログ

ご存知の方も多いかと思いますが,現在ツイッター等のSNSで「ストレスチェック」のワードで検索すると半分くらいが,とある社労士のブログにおける問題発言に関する投稿となってしまっています。具体的には,「ストレスチェックをうつ病社員のあぶりだしに使え」等と発言していました。批判が集中したためか,現在そのブログは閉鎖されています。

 そもそも,ストレスチェックをあぶり出しに使うことは法律上不可能であり,こちらの記事にあるとおり労働者のプライバシーは厳重に保護されます。仮にあぶり出しに使うとすると,産業医や外部業者が企業経営者と結託して個人情報を漏らすしかありません。産業医が漏らすことはまずないでしょう。なぜなら,刑事罰をくらって場合によっては医師免許停止等の行政処分を受けるリスクを背負ってまで,企業側に個人情報を漏洩させるインセンティブがないからです。

また,企業側としても,このような情報を収集することはかなりのリスク(ストレスチェック制度に対する反社会的挑戦とも言えるので,もしそれが発覚すると行政からも非常に強く処分されるでしょうし,マスコミ報道も必至)を伴いますので,まともな経営者であれば情報収集しようとは思わないでしょう。

 

その社労士のブログの存在を私は1年程前から知っていましたが,あまりに内容が不適切なため,いつか問題になるだろうと予想していました。今回,ストレスチェックが義務化され,社会的に労働者のメンタルヘルスに関する関心が高まる中,ついに大きく露呈してしまったかといった印象です。

 

社労士の仕事内容,ストレスチェックを誤解しないで欲しい

私は自分自身が精神科産業医+特定社会保険労務士であり,社労士の方とも多く接して来ましたが,この問題社労士のような考えを持つ人には出会ったことはありません。皆さん真摯に,「労働環境を改善して,労働者の幸福,そして会社の発展に貢献する」ことを目指して社労士業務をされていますので,今回の事件で,社労士全体が世間から悪者のように見られてしまうのではないかと心配しています。

 

労使関係が複雑化・多様化する中,社会保険労務士の担う役割は拡大しています。それに伴い高い倫理観が求められ,社労士会は倫理研修などを通してその高揚に努めているさなか,このような事件が発生したことは残念でなりません。 また,「やはりストレスチェックの結果は会社にダダ漏れなんだ」と労働者が勘違いしてしまい,正直に質問に答えることをせず,職場改善にもつながらないという危惧が生じてしまったことで,この問題社労士の罪は非常に大きいと思います。

弊社の立場・活動理念

企業と社労士・産業医の関係性に社会から疑念が生じている今,ここであらためて,弊社が産業医活動をしていく上での理念を記します。

病気が発生しにくい職場環境作り

まず何より,うつ病社員が生じにくい職場環境作りが大切であると考えています。そのような環境というのは,「社員間や,上司・部下の間のコミュニケーションが良好」,「公平な人事評価」,「ハラスメントのない環境」等が代表的ですが,これはまさに,病気うんぬん以前に『社員が自分自身を活かし,お互いに協力しあい,経営面からみても生産性・業績が向上する』環境であると言えます。労使が信頼をベースに一体となって、企業が発展し、そしてそこで働く労働者も幸せになることができれば一番良いのではないかと弊社は考えております。

弊社は,このような考えに共感して頂ける企業様とお仕事をさせて頂いております。この世の中には,労働者を使い捨ての駒としか見ず,潰れれば解雇すれば良いと考える企業もあるようですが,そのような企業様からのお仕事はお断りしています(そのような企業は,そもそも,しっかりした産業医を雇おうとの発想がないでしょうから,弊社への依頼自体がありませんが…)。

ただ,このような職場環境を作ることは「言うは易し行うが難し」であり,人事労務担当者の永遠の課題といっても良いかも知れません。当然,産業医のみで行えるような簡単な事ではありませんので,企業の人事労務戦略の一部・一環として,弊社の産業医サービスを利用して頂ければと考えております。

 

うつ病等になってしまった方への個別対応

うつ病になってしまった方への個別対応としては,まずはその原因が企業側にあるのかどうかを弊社では重視しています。 上記の職場環境の改善とは違い,ここは医学的知識・評価,労災に関する知識が求められる部分ですので,精神科医かつ特定社労士である弊社産業医がお役に立てることも多いと考えております。

労災認定基準を満たすような労働(時間外が月200時間であったり,ひどいパワハラを受けた等)が原因でうつ病になってしまった場合は,企業はその方の病気の回復のために,できるだけ支援していくことが公平・重要であると考えます。

一方で,プライベート等、業務起因性がない状態でうつ病になり,病気ゆえに仕事ができなくなってしまった方に対しては,精神科医・産業医として病状を客観的・中立的に評価しつつ,本人・同僚・会社の3者のバランスをとりながら,また労働契約(就業規則)や法・判例法理を意識して,適切な落としどころ・解決策を提案するように心がけています。

 

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