【コラム】ストレスチェックの実施者になることは産業医にとってリスクなのか①

2015-11-13

(この記事は,主に産業医の先生向けの記事となっております。企業の労務担当者の方には,直接的には役に立たないかもしれませんが,興味がおありであればご一読頂ければ幸いです。また,タイトルとおり「リスク」について書いていますが,私の個人的意見に過ぎませんので,詳しくは弁護士の先生などにお尋ね下さい。)

2016年7月20日追記)ストレスチェックではありませんが、産業医が訴えられるケースが新たに生じました。こちらの記事に詳細を記載していますので併せてご覧ください。

 

実施者になりたがらない産業医が多い

ストレスチェックに関する学会等で,厚労省の担当者や弁護士が演者の講演のあとの質疑応答には,たいてい次のような趣旨の質問が出ます。

「高ストレス者が医師面接を申し出ず,その後自殺してしまった場合,実施者をしている産業医が責任を問われることはあるのか?」

 その場で厚労省の役人が「産業医の責任はありませんよ」と断定的に言ってくれるはずはありませんので,うやむやな回答になり,それがさらに産業医の不安をかきたてる状況になっています。結局責任があるかどうかは,訴訟で裁判官が判断することですので,訴訟になってみないと分らないというのが正直なところです。特にストレスチェックに関しては,過去に蓄積された判例がゼロですので,弁護士の先生といえども100%確定的なことは言えないのでしょう。

 そのような状況ですので,リスクに敏感な先生ほど(単にめんどうな先生もごく一部おられると思いますが),ストレスチェックの実施者になることを嫌がります。それは上記のような状況を考えると,ある意味仕方がないことなのかもしれません。

 

厚生労働省の態度

さらにそのようなリスク回避の傾向を助長しているのは,厚労省の態度です。

労働安全衛生法および省令(←これらは法的拘束力あり)で,ストレスチェックの実施や医師面接を産業医の職務と規定しているにもかかわらず,厚労省は法的拘束力のない指針(正確には指針は一定の法的拘束力あり),実施マニュアル,通達などにより,「産業医がストレスチェックにかかわることが望ましい」と,「望ましい」に格下げしているのです。

「望ましい」であれば,産業医が嫌ならやらなくても良いとも解釈できるため(むしろそのような解釈の方が自然),ストレスチェックに関わらない産業医が多発するのです。

 産業医活動の実状(名義貸しやほとんど企業の衛生管理に携わっていない産業医が数多くいる)から,厚労省も苦渋の判断でそのような表現にせざるをえなかったのは理解できます。しかし,国民の代表機関である国会が定めた安衛法の内容を,「望ましい」に格下げして緩く解釈するのであれば,上記の「産業医活動の実状」の改善を急ピッチで進めるべきであると,私は思います。

 (産業医が抱えるリスクについては,その②へ続きます。)

 

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