ストレスチェックと衛生委員会【産業医が法的視点から考える】

2016-08-17

皆様の企業においては、「(安全)衛生委員会」がしっかりと毎月開催されていますでしょうか?さらには、議事録を作成し労働者に周知していますでしょうか?

 

ストレスチェックとの関係で、衛生委員会は非常に重要です。

なぜなら、万一不幸にも、労働者の方がうつ病等になったり、最悪自殺等まで至ってしまった場合、ストレスチェックが義務となった今日、「ストレスチェックを法令に基づいて、しっかり行っていたのか。」「しっかり行っていれば、病気発症や自殺は防げたのではないか。」という点が、かならず問題になってきます。

その際、ストレスチェックをしっかり行っていたと言うためには、衛生委員会の法令に基づく開催が非常に重要になってくるのです。

 

そもそも衛生委員会とは

設置義務

業種によらず全ての業種において、事業場で常時使用する労働者が50人以上の場合は、毎月1回以上衛生委員会を開催する義務が発生します。

 

構成メンバー

法令上、以下のように委員を選任する必要があります。

1 総括安全衛生管理者又は事業 の実施を統括管理する者等(1 名)

2 衛生管理者

3 産業医

4 労働者(衛生に関する経験を有する者)

 

1以外の委員については、事業者が委員を指名することとされています。

そして注目すべきは、この内の半数については、『労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合(過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)の推薦に基づき指名』しなければなりません。

 

これにより衛生委員会が形式上、労使の双方が参加して、職場の衛生について調査・審議する場となるのです。

(メンバーを構成する上での、最低人数についてはこちらの記事もご参照下さい。)

 

議事録と周知義務

委員会における議事の概要を労働者に周知し、委員会における議事で重要なものに関しては議事録を作成し3年間保存する義務があります。

 

労使双方が参加して行われた委員会の内容が、委員会に参加しなかった一般の社員に対しても周知されることになります。

 

ストレスチェックと衛生委員会

社内においてストレスチェック体制を構築する際には、法律・指針・厚労省マニュアルに沿って行うことになりますが、「衛生委員会で調査審議し、労使で自由に決定する」となっている事項が多数存在することに気付かれたかと思います。

 

国が一方的に決めるのではなく、例えば、どのような調査票を利用するか、何点以上を高ストレス者にするかまでも、衛生委員会で調査審議し(法律の大枠はありますが)企業において自由に決定できるのです。

これはかなり特徴的なことです。一般の健康診断で、「血糖値の異常値は、○○以上にしよう」等と勝手に自由には決められないのに、ストレスチェックではそれができるのですから、不思議だと思いませんか?

 

なぜそこまで自由度が高いのか。その理由の一つは、ストレスチェックに関しては、十分な研究実績(エビデンス)が存在しないため、どのような調査票を用いるか等を国が企業に一方的に強制できないからです。国家権力が、企業に義務を課すには、それなりの科学的根拠が必要ですが、ストレスチェックに関してはそれが不十分なため、各企業で自由に決めて下さいとなっているのです。

 

しかし、まるっきり企業の自由で決めれるわけではありません。企業(使用者側)の自由に任せると、例えば、お金のかかる高ストレス者医師面接の対象者を極力減らしいと考えた経営者が、高ストレス者となる基準を著しく高く設定するような事態が発生してしまうかもしれません。

 

そこで、上述のように、労使の双方が参加し、委員の半数は労働者の過半数労働組合又は労働者の過半数代表者の推薦で指名されている衛生委員会で、調査審議して決定するように、一定の歯止めをかけているのです。

 

簡単にいうと、「ストレスチェックを受ける労働者側も自ら参加して、自ら決めた事項なのでOK」ということです。逆にいうと、労働者が参加し、労働者の意見が加味されていなければ、非常にまずい、経営層の独断と判断されかねないということになります。
 

おざなりな衛生委員会は、ストレスチェックとの関係では非常に危険

生じてはならないことですが、不幸にも、企業内で過労死・過労自殺が生じてしまったとします。その場合、ご遺族等から企業責任を問われることも十分に考えられることです。

 

その際、既に冒頭でも述べましたが、ストレスチェックが法制化されたのに伴い今後は、ご遺族・ご遺族側の代理人から、ストレスチェックをしっかり行っていたかどうか追及されることが考えられます。

例えば、「適切な質問項目を選択していたか」「高ストレス者の基準は適切か」「実施体制、フォロー体制はしっかり整っていたのか」等を追及されるでしょう。

 

その際、「衛生委員会を開催して、ストレスチェックに関わる事項を労使で調査・審議していたか」も問われるものと思われます。

なぜなら、繰り返しになりますが、衛生委員会に「労使双方」が参加し対等な立場で調査・審議するからこそ、質問紙の選択や高ストレス者の基準値等が正当性を持つと考えられるからです。

 

法律上の義務である衛生委員会をそもそも開催しておらず、企業が独断で質問紙を選択したり高ストレス者となる基準点数を決定していたり、また、衛生委員会は開催しているものの、参加メンバーなど上述の法定の要件を満たしていない場合には、ストレスチェックの実施自体に瑕疵があることになります
そのような瑕疵のある衛生委員会を行っていると、ご遺族等から、『法に基づき適切にストレスチェックを行っていれば、発病や自殺を防げたのではないか』と言われてしまうおそれもあるのです。

ストレスチェックを外部機関に委託し、確実に実施できる万全の体制を整えている企業様はたくさんおられますが、衛生委員会は当然のことながら外部委託できません。
衛生委員会を法定要件に従い確実に実施していない場合は、いくら外部機関に実施部分を確実に委託したところで、根本の部分で瑕疵があることになります。
外部機関の多くは、企業から委託を受けて検査を実施さえすれば良いと考えているところも多く、衛生委員会での調査・審議までしっかりと踏み込んで助言してくれるところは少数です(衛生委員会は企業内部のことなので、外部機関がそこまで口を出すべきではないとの考えもあるのでしょう)。

しっかりと衛生委員会を開催しなければ、ストレスチェックの関係においても、企業リスクにつながることになりますので注意して下さい。

 

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