【ストレスチェック】高ストレス者以外から面接指導対象者を選ぶことはできるのか

2017-11-24

2年目のストレスチェック

今月末(2017年11月末)までが、法令により義務化されたストレスチェックの2回目の実施期限となります。私のクライアント先の企業でも、9月~11月にかけて実施するところが多く、その対応のために忙しくさせて頂いています。

2年目ともなると、会社の担当者も産業医も大分慣れてきた部分もあるかと思いますが、新たに疑問に感じる点も出てくるのではないでしょうか。
最近、産業医をしている知人の医師から、こんな質問を受けました。

「高ストレス者の中から、面接する人を選ぶのが普通だと思うけど、高ストレス者じゃない人の中からでも面接対象者を選んでも良いの?

 

確かに、昨年度から私自身も多少疑問に感じていた点でもありますが、この点に明確に言及しているストレスチェック関連の書籍やインターネット上の情報は、私の知っている範囲では見たことがありません。そこで、詳しく調べてみました。

法令等の文言をチェック

まずは、法令等がどのように定めているのかを、チェックしてみましましょう。

法→省令(規則)→指針→マニュアルの順に細部まで定められていく構成になっていますので、順に見ていきます。

(条文中のカッコ内の文言は、私による補足です。)

 

労働安全衛生法 66条の10第3項
事業者は、前項の規定による通知(←個人結果返却のこと)を受けた労働者であって、心理的な負担の程度が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件(←下記)に該当するものが医師による面接指導を受けることを希望する旨を申し出たときは、当該申出をした労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。

 

労働安全衛生規則 52条の15
法第66条の10第3項の厚生労働省令で定める要件は、検査の結果、心理的な負担の程度が高い者であって、同項に規定する面接指導を受ける必要があると当該検査を行った医師等が認めたものであることとする。

ストレスチェック指針
規則第 52 条の 15 の規定に基づき、事業者は、上記7(1)ウ(イ)に掲げる方法(←点数だけで選定するか、補足的面談も組み合わせるかの方法)により高ストレス者として選定された者であって、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた者に対して、労働者からの申出に応じて医師による面接指導を実施しなければならない。

 

ストレスチェック指針の赤字分が時に決定的かと思いますが、これらの文言を見ると、あくまで高ストレス者の中から、実施者が要面接者を選ぶと読み取れます。

 

さらに、厚労省ストレスチェック制度関係Q&Aにも以下の記載があります。

Q12-2 面接指導対象者は、実施者の判断で、高ストレス者の中から、実施者が判断して絞り込むということになるのでしょうか。

A 面接指導の対象者は、事業場で定めた選定基準に基づいて選定した高ストレス者について、実施者が判断していただくことになりますので、例えば、補足的に面談を行った場合などについては、その面談結果を参考にして実施者が絞り込む場合があり得ますし、高ストレス者全員をその評価結果を実施者が確認の上で面接指導対象者とする場合もあり得ます。

この記載からしても、面接指導対象者は、高ストレス者の中から選定するのが前提だということが読み取れます。

 

一方で、マニュアルには違う記載も

しかし、よくよく見てみると、厚労省のトレスチェック制度実施マニュアルには上記とは違った記載があります。

マニュアルの48ページの「面接指導対象者の確認」の部分には以下のように書かれています。

 

(2)ウ(P38)で選定された高ストレス者を含すべての受検者について医師による面接指導を受ける必要があるかどうか、実施者が確認します。

この文面からは、すべての受検者に対して、実施者が要面接かどうか確認する、すなわち高ストレス者に該当しなかった人に対しても要面接と判定しても良いとも読み取れます。

結論としては、高ストレス者以外から選定してもOK

結局どっちなのか、法令や実施マニュアル等からは分かりませんでしたので、担当行政機関に問い合わせたところ、

 

「厚生労働省としては、実施者が必要だと判断すれば、高ストレス者以外から面接指導対象者を選定しても差し支えないという立場」だそうです。
その根拠は実施マニュアルの48ページの記載だとのことです。

 

私もその考え方のほうが妥当だと思います。トータルでの点数はそこまで悪くなく高ストレス者には該当していないものの、ある一部の点数だけ極端に低い等で気になる人がいた場合には、実施者の判断で要面接と判定したい場合もあるかも知れません。その場合でも、実際に面接を申し出るかどうか(会社に自分の結果を公表するかどうか)の自由は受検者側にあるので、プライバシー保護の観点からも特に大きな問題はないと思われます。高ストレス者以外から要面接者を選ぶことをわざわざ法的に禁止する必要もないでしょう。

 

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