試し出勤・リハビリ勤務実施の注意点

2018-02-10

試し出勤・リハビリ勤務とは

試し出勤やリハビリ勤務は、労働基準法など法律で定められた制度ではありませんので、明確な定義はありません。
一般的には、長期間職場を離れている労働者が、スムーズに本来の職務に復帰できるよう、復職前や復職後に、一時的に業務負荷を軽減する等して様子をみることを言います。
復職前のものを試し出勤、復職後のものをリハビリ勤務と呼ぶことが多いですが、名称よりも、後述のように、試し出勤等をどのように行うかルールを定めた場合の、その中身の方が重要です。

 

厚労省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の中には、『試し出勤制度等』という言葉が出てきますが、試し出勤制度等として、以下の3つが挙げられています。

①模擬出勤:就業時間に合わせてデイケアや図書館などで過ごすこと

②通勤訓練:自宅から職場の近くまで来て、職場付近で一定時間過ごしてから帰宅すること

➂試し出勤:職場復帰の判断等を目的として、本来の職場などに試験的に一定期間継続して出勤すること

 

このように、一概に試し出勤制度等といっても様々な概念が含まれますが、いずれにも共通するポイントとしては、手引きにも書かれているように、

「これらの制度の導入にあたっては、処遇や災害が発生した場合の対応、人事労務管理上の位置づけ等についてあらかじめ労使間で十分に検討し、ルールを定めておきましょう。」

「作業について使用者が指示を与えたり、作業内容が業務(職務)に当たる場合などには、労働基準法等が適用される場合があることや賃金等について合理的な処遇を行うべきことに留意する必要がある。」

という点です。

制度設計上、特に注意すべき点

試し出勤・リハビリ勤務を行う場合の制度設計として、注意すべき点は多数存在します。例えば、

・試し出勤を開始する条件、期間、打ち切る条件は?

・試し出勤中の事故が起きたら労災適用されるのか?

・試し出勤中、どの職場で、段階的にどのような業務負荷(勤務時間と内容)をかけていくのか?

・試し出勤中の賃金は?

・体調に対するフォローは?(体調悪化時、すぐに上司等に報告させ、周囲も本人の体調に十分注意する)

などが挙げられます。

 

それらを決める上で、まず決めないといけないのが

「試し出勤・リハビリ勤務を復職前に行うのか、それとも、正式に復職した後に行うのか」

ということです。

 

試し出勤は復職前、復職後、どちらが良いのか

復職前に行う場合

復職前に試し出勤を行う場合、制度の意味合いとしては、「正式に復職できる状態にまで病状が回復しているか、会社として情報を集める。情報を集めて、より慎重に復職可否を判断する。」という面が強くなります。

主治医が復職可能と判断していても、厚労省復職支援手引きに「主治医による診断書の内容は、病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、それはただちにその職場で求められる業務遂行能力まで回復しているか否かの判断とは限らないことにも留意すべきである。」とあるように、実際には業務できるレベルまで回復していないケースも散見されます。
まずは職場に来てもらって、実際にどの程度のことができるか、会社として情報収集してから復職判断を行うことができるのは、この場合の長所です。(ただし、「試し出勤中は無給」→「使用従属関係に無い純粋に任意の作業でないといけない」→「純粋に任意というためには、試し出勤中の状態を復職判定に使ってはいけない」という説を唱える学者の先生もあり、この辺は実はビミョーな難しい問題なのです。)

一方、後日記事をアップしますが、復職前のため一般的には賃金が支払われていませんので(復職させていない状態のまま、賃金を支払って休職者を指揮命令関係に置くのも可能なのかもしれませんが、私が知っている復職前に試し出勤をさせるケースでは、傷病手当金との関係等から多くの会社が無給としています)、「職場に来た労働者に、どの程度のことさせて良いのか、判断が難しい」、「上司がどこまで本人に指示できるのか、本人の不十分な部分(例えば遅刻する等)に注意できるのか、判断に迷ってしまう」という欠点があります。ここを間違えてしまうと、賃金支払い義務が生じてきます。
 後日の記事でも取り上げる、試し出勤中無給とされていたケースが最低賃金法違反になるか争われたNHK名古屋放送局事件(名古屋地裁平成29.3.28)でも、上司が試し勤務中に遅刻してきた労働者に注意した際に、労働者が「私って戦力にカウントされているのか?」「要するに、ちゃんと通常の仕事どおりにもう出てこい、出てきてちゃんと仕事しろということ?」と質問・反論してきた時、上司がどう答えたかが取り上げられています。こう問いかけられた時、会社からしっかりと試し出勤の趣旨や注意点の説明を受けている場合を除き、自信を持って返答できる上司は少ないのではないでしょうか。

その一方、労働契約上の労務提供となり賃金支払い義務が生じることを避けるために、安全をとって負担にならない軽い作業ばかりさせても、「ごく軽い作業しかさせていないから、労務遂行能力が回復しているのか分からない。毎日、会社に来れるかどうか程度しかわからない。」というジレンマが生じることになります。

 

復帰後に行う場合

一方、試し出勤を復職後に行う場合には、既に復職は決まっていますので、復帰後の再発防止の意味合いが強くなります。
すなわち、復職後いきなり通常勤務を行っては本人にとって負担が強く再発してしまう可能性があるので、軽負荷から開始して徐々に負荷を上げていこうという意味合いです(まさに「リハビリ」的な意味合いであり、リハビリ勤務と呼ばれることも多い)。

この場合の長所としては、上述の上司の迷いが少なくてすみます。例えば、もし本人が遅刻したり仕事中にウトウトしたり、業務パフォーマンスが不十分な場合には、当然のことながら注意をして改善を求めても問題になりません。また、出勤途中に事故が起きた場合は、既に復職しておりそれは通勤ですので、労災が適用さうるのは明白です。

一方、一旦正式に復職していますので、復帰後の業務遂行が不十分だと会社が判断しても、再休職させるにはハードルが高くなります(残りの休職期間がなく、再休職判断イコール退職や解雇になる場合はなおさら)。再休職させるには、再休職に関する規程の整備や、労務遂行状況に対する上司等の正当で客観的な評価が求められます。産業医面談や主治医への意見聴取も重要になってくるでしょう。
また、業務軽減を認める期間を予め区切る等しなければ、いつまでも軽負荷のまま経過することにもなりかねません。復職して1~2年経つものの、軽作業しかさせられず、遅刻・早退が頻回にみられる状態が続いて、上司も同僚も疲弊してしまっているケースも時々見かけます。

 

このように、試し出勤を復職前・復職後に行うことには、会社にとってそれぞれ一長一短あり、どちらが良いとは一概に言えません(もちろん、両方を行うこともできます。)

 

以下私見になりますが、

・試し勤務を復職前に行うのであれば「遅刻や欠勤の無い安定した出勤と、比較的簡単な作業ができるかどうかのみ確認できれば良い」と割り切る。通常の労務提供ができるかどうかの判断は、職場復帰をした後に行う。
(試し出勤をさせた結果、復職不可と判断するのであれば、通常の労務提供(債務の本旨に従った労務提供)ができないと会社が判断しなければならないが、復職前には軽易な作業しかさせられないため、復職不可と判断できるのは、出勤が不安定(欠勤、遅刻、早退)か、軽易な作業すらできない場合に限られるから。)

 

・復職後に試し出勤(リハビリ勤務)行い、もし回復が不十分で労務提供が完全にはできないことが判明した場合には会社として再休職も検討して行くのであれば、再休職となる基準・ルールを整備し、本人の働きぶりに対する上司の評価を頻繁に明確・公平に行い、本人にも都度フィードバックする。産業医による復職後のフォローも徹底する。

 

のが良いのではないかと考えます。

 

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