【コラム】ストレスチェックや健診と労働者のプライバシー

2015-11-12

ストレスチェック制度におけるプライバシー

ストレスチェック制度では,労働者がストレスチェックにどのように答えたかについてのプライバシーは,以下の方法により固く守られています。

 ①ストレスチェックを受けるか受けないか自体が,労働者の自由。(なるべく受けてもらうよう企業等は勧奨しても良いが,強制は不可。)

②ストレスチェックの個人結果は,本人の同意がある場合以外は企業に提供されない。

③集団分析をするには集団の規模を10人以上に設定し,個人が特定されないようにしなければならない。

④人事権をもっている人は,ストレスチェックの事務すら担当できない。

 また,ストレスチェックの結果が悪い場合でも,企業はそれをもって労働者を不利に扱ってはいけないことが法律で決められています。

 このように,ストレスチェック制度においては,非常に強力に労働者のプライバシーが保護されています。ストレスの具合や心の調子といった個人のセンシティブ情報であるため,立法の過程で厚く保護されました。

 

健康診断結果とプライバシー

皆さんは少なくとも年に1回,会社の費用負担で健康診断を受けていると思います。それはストレスチェック制度と同じく,労働安全衛生法で企業に実施が義務付けられているからです。

しかし,ストレスチェックとは違い,健診結果について企業に報告するかどうかの労働者の自由は一切ありません。むしろ,労働者に健診を受ける法的義務を課しており,健診データは本人の意思に関わらず病院などの検査機関から企業側に直接提供され,そこから企業が労働者に対して結果をお知らせする仕組み(実務上は、検査機関から直接労働者へ届くこともある)になっています。この違いは何なのでしょうか?

 個人情報・センシティブ情報ではないからでしょうか?個人的な意見になりますが,健診結果もかなりのセンシティブ情報だと思います。個人の血液データと既往歴(過去にどのような病気になったか)を毎年企業が全て収集して把握するわけですから,実は結構すごいことなんじゃないかと思います。職場で感染症が広がるのを予防するため結核等の検査をするのなら分りますが,なぜ血糖値や肝機能などの生活習慣病系の項目までチェックされるのでしょうか?

ストレスチェックは,結果が良くなるように自分で調整する(良いように答える)ことが可能ですが,血液検査ではそうはいきません。血液データや,過去の病気の経歴を見て,企業が労働者にとって不利益に扱うことが,100%絶対にあり得ないとは言い切れないと思います(幸い弊社の顧問先で,そのような不利益取り扱いを経験した例はありませんが…)。

また、個人の自立や自己管理・自己責任が重視される国(アメリカ等)では、このように自分の血液データを強制的に会社に収集されるのは、かなり違和感のあることであろうと思います。

実際、毎年健康診断を従業員へ受けさせる義務があり、企業自身がその結果を収集して見ることができるのは、私の知る限り、先進国の中では日本だけだと思われます。

 

プライバシー保護の程度の違いはどこからくるのか

この違いはどこから生じるのか?結局は,「立法化された時代背景」が影響しているのだと思います。

終身雇用が当たり前の時代で,会社と労働者が一生のお付き合い,家族・親子の関係であれば,親(会社)が子ども(労働者)のために健診を実施して採血データを収集し,子どもの保護・健康管理のために利用するのは当然であり,子どももそれに何ら違和感を感じなかったのでしょう。
「お父ちゃんがええようにしてくれる、守ってくれる。血液データや過去の病気のデータを,悪く扱うはずがないんや!」と信じているのです。

しかし現代では,企業風土にもよりますが,家族と同様の忠誠心を企業に対して一生奉げることを誓っている労働者は少ないのではないでしょうか?労働者側も自分のプライバシーの権利を意識するようになり,ストレスチェック制度の立法過程に取り込まれたのだと思います。

また,健康診断結果については確かにプライバシー情報ですが,国としても毎年それらの生活習慣病系項目を含めてチェックし,企業内での保健指導や早期の病院受診につなげて医療費を抑制したいという目論見があると思いますので,今後その部分が法改正され、健診内容から生活習慣病系項目が削除されることは余程のことが無い限りないでしょう。

 

まとめ:時代にあった適切な労務管理をしましょう

労使関係は時代により変化します。現代では,労働者側も自己の権利を主張するようになり,かつてのように「黙って親(会社)についてこい」と考えてルール無視の労務管理をするのは非常に危険な時代になっていると思います。

弊社では,そのような時代の流れも汲んだメンタルヘルス対策・産業医サービスをご提供できるよう努めています。

 

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