主治医と産業医(会社)の意見が異なる時、傷病手当金はどうなるのか

2016-04-05

休職しているメンタル不調者の方が、主治医からの「復職可能」との診断書を会社に提出するも、会社側が産業医意見など勘案して「病状が回復しておらず、復帰は時期尚早」と判断し復帰を認めなかったとします。(なぜ、主治医と産業医の意見が割れる事態がよく生じるのかはここでは書きません。機会があれば、また記事にしてみたいと思います。)

 

また、職場復帰手続きをしっかりと踏む会社では、産業医・人事部・上司等が参加して復職判定会議のようなものを開催する場合もありますので、その手続きに数週間を要することもあり、「主治医判断の復帰可能日から、実際の復帰日」までの間に相当のギャップが生じる場合もあります。

 

その場合、休職者が受給している傷病手当金はどうなるのでしょうか?

 

産業医活動をしていると、そのようなケースにおいて、「主治医が傷病手当金申請書の医師意見を書いてくれなかった。このままでは傷病手当を受給できないかもしれない、どうしよう!」と労働者と会社がともに困ってしまうケースに時々出くわします。

なぜ主治医は意見書を書いてくれないのか

まず断っておきますが、上記のようなケースにおいて、全ての医師が意見書記入を断ってくる訳ではありません。多くの場合、「記入を断ると、患者さんが傷病手当をもらえなくなって生活に困窮してしまうのではないか。」等と考え、患者さんのために書いてくれる先生がほとんどだと思います。
また、上述の復帰日のギャップが生じるケースにおいても、「ある程度のギャップが生じるのは手続き上仕方ないことだ」「自分が書いた復帰日に、忠実に即復帰させる義務が会社にある訳ではない。」と考え、実際の復帰日まで受給できるよう意見書を書いてくれる医師がほとんどです。

 

しかし、一方では、断ってくる医師も現実に存在します。

私自身、精神科医として働いていた時には、このようなケースに遭遇し、どう判断するか迷った経験もありますので、断る医師の気持ちもよく分かります。

以下は、精神科医時代の迷える私の心の内です。

 

「自分は復職可能と判断し、その旨を診断書に書いた。その一方で、傷病手当金申請書に、「就労は不可」と矛盾することを書きたくない!」

 

「復職できないと判断したのは会社側。じゃあ、傷病手当金受給のための「就労不可」は、そっち(会社側)でなんとかするのが筋じゃないか!」

 そんな場合にどうすべきか、厚生労働省が答えてくれている

厚生労働省が、全国の健康保険組合に対し以下の事務連絡を出しており、どう対応すべきか全てはそこに書かれています。

2014年9月1日付 厚生労働省保険局保険課事務連絡(厚生労働省HP)

健康保険組合向けの事務連絡ですが、企業の人事労務担当者、産業医等の産業保健スタッフも知っていて損はない内容だと思います。

詳細については事務連絡を参照して頂くとして、以下簡単にポイントだけを書き出してみます。

産業医が主治医の代わりに意見書を書くことについて

結論から言うと、ほとんどのケースにおいて、産業医が主治医の代わりに意見書を書くことはできません。

なぜなら意見書を作成する医師は、そのメンタル不調者の診療(治療)をしている医師である必要がありますが、ほとんどのケースにおいて産業医は治療はしていませんので(こちらの記事(産業医が診断・治療しない本当の理由)もご参照下さい)、意見書を作成することはできません。

 

ただし逆に言うと、企業内に診療所があり、そこで産業医がメンタル不調者に対し投薬治療等を行っている場合は、意見書を作成することができます。

 

産業医の意見を健保に提出できる

一方で、事務連絡には以下のように書かれています。

『被保険者(=メンタル不調者)が、診療を受けている医師等から労務不能であることについての意見が得られなかった場合、当該医師等とは別の産業医に対し、労働者としての立 場で就業についての意見を求め、意見を求められた当該産業医が任意に作成した書類を保険者(=健康保険組合)に提出することは差し支えない

 

まず、大前提として、傷病手当金を給付するかどうかを決定するのは、そのメンタル不調者が加入している健康保険組合(保険者)に決定権があります。国でも、会社でも、主治医でもありません。

健康保険組合は、種々の書類・意見等を勘案して、給付するかどうかを最終決定する訳です。その際、「主治医が就業可能(復職OK)と言っている=傷病手当金は打ち切り」に直結するのではなく、他の意見があればそれも勘案して、給付の是非を決定できます。

 そこで、被保険者(メンタル不調者)と会社は、健康保険組合に対して、「主治医は復帰OKと言ってるけど、ちゃんとした理由・根拠があってまだ復職できませんので、引き続き給付してね。」と訴える書類を提出することが認められています。

その「ちゃんとした理由・根拠」というものが、主治医よりもその方の就業環境を良く知る産業医の意見な訳です。

なぜまだ就業は不可と判断したのか、その根拠を産業医が精神医学・産業医学的観点から十分に説得力を持って記載した書類を提出すれば、健康保険組合としても傷病手当金を引き続き給付せざるを得なくなります。

主治医が復職可と判断する場合、「日常生活を問題なく送れるレベル」に回復したことを表していることが多く、「問題なく就労できるレベル」まで回復しているとは限らないということは、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」にも明確に書かれていることです。
もし、健康組合が主治医の意見のみに従い、産業医の正当な意見を無視して給付を打ち切った場合、それは明らかに不当と言えます。

 

弊社では、このようなケースでもしっかり対応致します

弊社は、「しっかり働けるまで病状が回復してから、職場復帰するのが最善」とのスタンスで活動しています。経済的理由等から早く復帰したいというメンタル不調者のお気持ちはよくわかりますが、回復していない状態で復帰すると、再発・病状悪化リスクが高く、一緒に働く同僚にも迷惑がかかりますし、何よりメンタル不調者本人にとっても良くありません。

 病状がまだ十分に回復していないのに、本人の希望が色濃く反映された主治医診断書を会社に提出されるメンタル不調者の方もいらっしゃいますが、そのような場合には、産業医意見と主治医意見が分かれることもしばしば経験します。

 仮にそうなったとしても、メンタル不調者の方が『職場復帰はできない。しかも、傷病手当金も受給できずに困窮する。』ようなことがあってはいけませんので、弊社では必要な場合には、上述の産業医意見書を健康保険組合宛に作成させて頂くことも行っております

これも産業医が行うべき業務内と考えておりますので、基本報酬内で対応させて頂き、別途意見書作成費用などは頂いておりません。安心してお気軽にご相談下さい。

 

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