衛生委員会におけるメンバー推薦の重要性

2019-12-23

前回のブログの続きとして、私が最近経験した労基署からの是正勧告・指導事項について、順に見て行きましょう。

 

2019年安衛法改正と衛生委員会

2019年の安衛法改正で、衛生委員会のメンバー構成(厚労省資料へリンク)が変わったわけではありませんが、「(安全)衛生委員会」というワードが関わってくる改正部分は、以下のように複数存在します。

・事業者は産業医から勧告を受けた場合、勧告内容と講じた措置内容を衛生委員会へ遅滞なく報告する

・産業医の辞任・解任時に衛生委員会へ報告する

・産業医は、衛生委員会に対して調査審議を求めることができる

・事業者は、衛生委員会の開催の都度、委員会の意見・当該意見を踏まえて講じた措置の内容・委員会における議事で重要なものを記録し、保存する

・長時間労働により面接指導を行う義務がある労働者以外の労働者に対する、必要な措置の実施に関する基準を定める場合は、衛生委員会で調査審議する(←ややこしい書き方になっていますが、要は、残業が80時間を超えて本人希望がある場合等は医師面接が義務となりますが、それ以外で健康への配慮が求められる人に対して何らかの措置(例えばセルフチェックシートを配って、結果が悪い人だけ医師面談をする等)を行う場合は、どのような基準で対象者を選ぶか(例えば、残業45時間以上の人にチェックシートを配る)について、衛生委員会で調査審議するということです。)

・産業医が、労働者の健康管理等を行うために必要な情報を労働者から収集する際の情報の取り扱いについて、衛生委員会で調査審議する

・健康情報取扱規程の策定において、衛生委員会で調査審議する

 

このように、ストレスチェックの時もそうでしたが、何かにつけて衛生委員会へ報告、調査審議するという形になっています

 

衛生委員会メンバー推薦手続きの重要性

このように衛生委員会が重視・尊重されている理由の根本には、以下の条文の存在があります。

労働安全衛生法17条4項
事業者は、第一号の委員以外の委員の半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない。

すなわち、衛生委員会のメンバーの半数は、過半数労働組合であったり、過半数代表者の推薦で選ばれているのだから、そこで調査審議して決定した事項であれば、「会社が一方的に勝手に決めた」のではなく、「労使双方の議論のもと、同意・決定した」という形になるため、衛生委員会での報告・調査審議が重視されているのです。

逆に言うと、ちゃんとした選任の手続きが踏まれていない場合は、衛生委員会の公平性が担保されていないため、問題となります。

 

衛生委員会のメンバー構成・推薦に関する労基署の指摘

実際、その点を労基署から是正勧告されたケースも最近報道されていました。

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広告大手、電通の東京本社(東京都港区)が、労働基準法と労働安全衛生法に違反したとして三田労働基準監督署(東京)から今年9月に是正勧告を受けていたことが分かった。(略)社員の安全や健康を確保するために社内に設ける安全衛生委員会の運営に際し、最低1人を委員とすることが義務づけられている産業医をメンバーに入れていなかった。委員のメンバーの半数を労働側委員にしなければならない規定にも違反していた。経営側委員が半数以上を占め、経営側の意見が通りやすい状況になっていた。

2019年12月5日 朝日新聞
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私が実際に経験した事例では、社内の各部署からそれぞれ代表者(経営側でもなく、管理職でもない一般職の方)に出席してもらい、10人程が参加し各部署で働く人を代表して色々と意見を述べてもらっていたにも関わらず、過半数代表者からの推薦を受けていないと労基署に指摘され、是正勧告を受けたケースがありました。

このような事態を避けるためには、過半数代表者の方に推薦してもらう手順を確実に踏みつつ、過半数代表者の方に推薦状に署名してもらって書面として残しておけば、労基署から確認を受けた場合でも、推薦状を見せればスムーズに納得してもらえます(衛生委員会、推薦状などのキーワードでネット検索すれば、フォーマットも複数出てきます)。

このように、衛生委員会をちゃんと開催しているか、議事録を作成し周知しているかという点以外にも、メンバーを適切に選出しているかについても労基署から問われますので、注意が必要です。

 

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