メンタル不調関連の就業規則整備のポイント➁
前回の記事からの続きです。
③休職期間の通算
休職期間を通算する規定がない場合、一旦復職すれば休職期間はリセットされますので、理論上は何度も休職と復職を繰り返すことも可能です。
「何度も休職と復職を繰り返し、就業規則を悪用している」かのように仰る上司や人事担当者もいます。
しかし、メンタル不調者からすれば、
・「体調が良くなったから復帰」(←正当なこと)
・「再度病状が悪くなって働けないから、ルール(休職規程)に従って再休職」(←正当なこと)
・「働けるまで回復したから、職場復帰する」(←正当なこと)
・「会社が就業規則に通算規定を定めていないから、休職期間がリセットされる」(←ルールにのっとりリセットされているだけであり、本人は関係ない)
というだけであり、何ら非難されるべきことは行っていません。 (もちろん、休む必要が無い状態なのに、病状が悪いと虚偽の主張をして休んでいる等であれば、非難されるべきことですが。)
就業規則は労使間のルールであり、また企業が自ら定めたルールでもあるのですから、それに縛られます。自分でルールを定めた以上は、ルール通りに対応しなければならないのです。
休職を何度も繰り返されるのが困るというのであれば、メンタル不調者に対して不満を述べるのではなく、就業規則を以下のように変更することを検討すべきです。
例:『復職後6カ月以内に同一又は類似の事由により欠勤ないし通常の労務提供をできない状況に至ったときは、復職を取り消し、直ちに休職させる。その場合の休職期間は、復職前の休職期間の残期間とする。』
④職場復帰基準
休職から復職する際の復帰基準を、就業規則に入れ込んでしまう方法もあります。
ただ、その際には、場合によっては就業規則の不利益変更になりますので、合理的な基準を入れ込むようにして下さい。
合理的ではない基準を入れた場合は、無効になります。
合理的でないものの代表としては、「健康時と同様の業務遂行が可能であること」と復帰の要件にすることです。
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド事件(東京地裁平成26年11月26日)の判例では、
『精神疾患は、一般に再発の危険性が高く、完治も容易なものではないことからすれば、「健康時と同様」の業務遂行が可能であることを復職の条件とする本件変更は、業務外傷病者の復職を著しく困難にするものであって、その不利益の程度は大きいものである一方で、本件変更の必要性及びその内容の相当性を認めるに足りる事情は見当たらないことからすれば、本件変更が合理的なものということはできない。』
として、不合理な復帰基準と判断されていますので注意が必要です。
⑤休職中の病状報告
これについては、色々と検討すべき事項があるため、別記事にします。