ストレスチェックQ&Aが更新されました
厚生労働省がストレスチェックQ&Aを公表し過去に何度か更新されていますが、先週最新版に更新されました。
ストレスチェック制度が既に開始された後での更新となり、見逃してしまいがちですが、しっかりチェックするようにしましょう。
今回の更新では、新たなQ&Aが3つ追加され、過去に既に公表された回答の一つが修正されています。
具体的にどう更新・修正されたかは厚労省のHPを見て頂くとして、この記事では、変更点に関する注意点をいくつか書いてみたいと思います。
① ストレスチェック社内規程における、実施者等の表記方法
社内規程には、ストレスチェック制度の実施体制を定めるようになっていますが、その表記の仕方として、『実施者:○○事業場 産業医』のように、職名等で特定することが可能な場合は必ずしも個人の氏名まで記載する必要はないとのQ&Aが追加されました。
ストレスチェックマニュアルの中には、『実施代表者:○○ ○○(当社産業医)』という記載例があるため、氏名を具体的に書く必要があり産業医が変わるごとに規定も修正する必要があるのかとの心配もありましたが、そのような心配は不要になりました。
② 「高ストレス者=面接指導対象者」ではありません。絞り込みが必要。
新たなQ&Aの2つ目は、「インターネット上で無料で受けることができるメンタルヘルスに関するチェックでは、安衛法上のストレスチェックをしたことにはならない」というものです。ダメな理由は、実施者が結果を見た上で、高ストレス者が面接指導対象者かどうかを判定しておらず、法定の要件を満たしていないからです。
基本的なことですが、「高ストレス者=面接指導対象者」ではないことに注意しましょう。必ず実施者が結果に目を通して、どの高ストレス者が面接指導対象なのかを判定しなければなりません。
ただ、高ストレス者であるにもかかわらず面接指導対象から外すと判断するには、それなりの理由が必要になりますが、あえて積極的に対象外とする理由もあまりないものと思われますので、実質的には「高ストレス者≒面接指導対象者」となると思われます。絞り込みを行う場合は、必ず合理的な理由が必要になると思われます。
③ 10人未満の集団設定が絶対NGなわけではない
3つ目の新たなQ&Aは、『10人未満の集団においても、「仕事のストレス判定図」を用いて集団ごとの集計・分析を行うことは可能』というものです。
私が企業様からストレスチェックに関するご相談を受ける際、「10人未満の集団設定は一切できない」と勘違いされているケースもありますが、そのような集団設定が禁止されている訳ではありません。10人未満の場合には、個人が特定されうる分析方法が禁止されているのです。
特定されうる分析方法は、例えば、点数の分布図を出す等です。分布図で、一人だけ極端に点数が悪い人がいた場合、「これはたぶん、あの人じゃないか」と特定されかねませんので、そのような分析は禁止されています。一方で、「単純に平均点のみ出す」といった分析方法は、個人の特定にはつながらないため禁止されていません。
個人的な意見としては、10人未満の部署がある時は、全く業務内容や指揮命令系統の違う他の部署と無理やりくっつけて10人以上にして分析するよりは、平均点等、個人が特定できない方法で分析した方が、職場改善につながりやすいのではないかと思います(もっとも、集団の人数が少ない場合は、ひとり極端に点数が悪い人がいた場合、平均点が大きく下がってしまう等のおそれがありますので注意が必要ですが)。また、平均点を出すような方法であっても2人の集団は不適切(自分以外の人の点数が自動的にわかってしまうため)であり、3人以上にする必要があります。
④ ストレスチェックの結果を労基署に報告する際の変更点
Q19-4の厚労省の回答が修正されましたので注意して下さい。
『本社と所在地が異なる事業場において、ストレスチェックを本社の産業医を実施者として実施した場合』、労基署への報告書の「検査を実施した者」の欄は、過去のQ&Aでは3番の「外部委託の医師」として報告するとなっていましたが、今回の修正で、2番の「事業場所属の医師(1 以外の医師に限る。)」で報告するように変更となりましたので注意しましょう。産業医がいない事業場や、居てもストレスチェックに関わることを断られたケース等では、本社の産業医等がカバーすることも十分に想定されますので、今回のこの修正は要チェックです。
なぜ修正されたのかまでは載っていないので修正された理由はわかりませんが、私が勝手に推測するに、厚労省としてはストレスチェック制度を「企業内のリソースで完結できたか」それとも「外部に委託して行ったか」を知りたいのではないでしょうか?本社の産業医ということであれば、一応社内リソースとして2番で報告して欲しいという意味合いでしょうか。
以上、簡単に今回の更新に関する注意点を記載しましたが、今後も引き続き更新されるものと思われますので、「こころの耳」等で最新情報をキャッチアップするようにしましょう。