産業医とは?産業医の役割
産業医を選任し,月1回以上職場巡視を行うのは法律上の義務です
労働安全衛生法により,従業員数が50人以上の事業場においては,産業医を選任し,かつ月に1回以上産業医による職場巡視を行う義務があります。
産業医を選任していない,選任していても月1回以上職場巡視をさせていないこと(名義貸し)は違法行為であり,企業コンプライアンス上非常に問題があります。
労基署からそれらの違法状態を是正するよう指導を受けても,「産業医を選任しなくても,たかが罰金やから放っておけ。」と仰る方がごくまれにいらっしゃいますが,そのような対応はあまりお奨めしません。なぜなら,書類送検され企業名が公表される恐れがあること,そして,労基署から要注意企業として目を付けられ違法残業・未払い残業代の調査などにまで飛び火し,結局はかなり高い代償を支払うことになるからです。
「義務だから仕方なく選任する」では,損します
産業医を選任しなければならないのなら,御社にとって役に立つ産業医を選任しましょう。最近では,いわゆる過労死防止法が施行されたり,東京と大阪の労働局に「過重労働撲滅特別対策班(通称かとく)」が設置され,設置後わずか3カ月で靴量販店が書類送検され大々的に報道されてしまうなど,従業員の健康管理に対する企業の責任が強く問われる傾向にあります。
企業と共に,従業員の健康管理に取り組める産業医を選任すべきであり,単に費用が安いだけで能力の低い産業医を選任すると,まさに無駄な費用になってしまいます。
産業医によって,得意分野・専門分野は異なります
医学部を卒業すると何科でも自由に名乗ることができるため,多くの産業医が「メンタル対応が得意」「メンタルヘルスのエキスパート」と謳って企業にアピールしています。しかし,その中には,実は内科や外科が専門で,精神科が専門ではない先生も大勢おられます。
内科の先生は生活習慣病指導に強い,外科の先生は癌の相談に強い,整形外科の先生は腰痛等に強いなど,それぞれの専門科目にそれぞれの良さがありますので,御社がそれらの分野を強化して行きたいのであればその先生方に産業医をお願いすべきです。
しかし,御社が本当にメンタルに強い産業医を選びたいのであれば,『日本精神神経学会専門医(=精神科専門医)』の資格の有無が重要な目安になります。
学会の専門医資格は,大学卒業後,精神科での診療実績を積み研修プログラムを修了し,専門医試験に合格した者でなければ勝手に名乗ることができないからです。または,厚生労働省が認定する『精神保健指定医』の資格の有無も一つの目安になります。
また、精神科医は患者さんを治療するプロですが、企業と従業員の間の調整役である産業医の業務とは全く異なります。ですので産業医活動を高いレベルでしっかり行ってもらうには、試験なしの座学のみで取得できる日本医師会の産業医資格だけではなく、「労働衛生コンサルタント」又は「日本産業衛生学会専門医」の資格を持つ産業医を選ぶことをお勧めします。
産業医によって得意分野が異なりますので,御社が力を入れたい分野に応じた産業医を選任するようにしましょう。