メンタルヘルスの新キーワード 「合理的配慮」とは?

2016-01-25

改正障害者雇用促進法が4月から施行されます

改正障害者雇用促進法が今年4月から施行されます。企業で働くメンタル不調者への配慮に関係してくる条文(36条の3)から以下に一部抜き出します。

『事業主は、障害者である労働者について、……障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならないただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。』

 

障害者の定義・範囲

障害者という言葉からは、一般的には、足が不自由な方(身体障害者)であったり、知的障害者の方を指すように考えがちですが、この法律の「障害者」の範囲はさらに広い概念です。具体的には『差別禁止や合理的配慮の提供の対象となる障害者は障害者雇用促進法第2条第1号に掲げる障害者(身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者)である』を言います。

つまり、うつ病等のメンタル不調のため、休職や復職を繰り返している人は、『長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者』に該当し、この法律による合理的配慮の対象となる可能性があります。障害者雇用率のカウント(カウントには障害者手帳等が必要)とは異なりかなり広い概念となりますので注意が必要です

 

合理的配慮の中身

会社は障害者に対し、過度の負担にならない範囲で合理的配慮を行う必要がありますが、どこまで配慮しなければならないのかは難しい問題です。

例えば、肢が不自由な労働者に対し、会社入り口の数段の階段にスロープを付けてバリアフリーにする等は合理的配慮義務の範疇でしょう。

一方で、うつ病の社員の方が、体調が悪い場合にいつでも気兼ねなくいくらでも休めるよう社内に自分専用の個室を設けるよう会社に要求してきた場合はどうでしょうか。従業員に対し、「就業時間中でも好きなだけ休んでも良い。個人の仮眠室を作る。」と認めることは、大抵の場合企業にとって過度の負担になるでしょうから、そこまでの配慮はできないと断っても良いと思われます。ただし、法律上、断るだけではだめで、会社と労働者で話し合いどのような配慮なら可能なのかを考えていく必要があります(例えばこのケースであれば、個室は無理だが、昼休みに静かに休める共用のスペースを用意する等)。

 合理的配慮の中身を考えるには医学的知識と労働法的知識が必須

上記の二つの例は、極端なわかりやすい事例ですので容易に結論を出せますが、企業で生じる実際のケースはもっと複雑で判断に困るケースが少なくありません。特にメンタルヘルス不調は、外部から症状などが見えにくい等の理由から、判断が非常に難しくなります。厚生労働省から合理的配慮指針が出ていますが、そこに示されている配慮例は「出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること」「できるだけ静かな場所で休憩できるようにすること」などの当たり障りのない当たり前の内容しか書かれておらず、実際のケースを解決するには一定の参考にはなりますが、全てのケースに対応できるわけではありません。

適切に合理的配慮の内容を確定するには、医学的知識と労働法の知識が必要になってきますが、その際に企業にとって役に立つのが産業医であり、社労士や顧問弁護士になります。

労使紛争における合理的配慮と産業医の役割】へ続く

 

 

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