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「労働者の心身の状態に関する情報の取扱い」と「産業医の責任」

2018-06-13

検討会が開催されています

先日の記事でもご紹介しましたが、現在厚生労働省で「労働者の心身の状態に関する情報の取扱いの在り方に関する検討会」が実施されており、本日時点(2018年6月13日)で、3回の検討会が既に実施されています。

労働安全衛生法の改正を含む働き方改革関連法案は、現在参議院で審議中ですが、もし成立した場合、安衛法104条で「労働者の心身の状態に関する情報の取扱い」が新たに追加され指針も公表されることになっていますので、本検討会の内容が反映されるものと思われます。

検討会議事録を見ると、様々な議論がなされていますが、やはり論点になっているのが、

『企業が扱う健康情報には様々な種類のものがあるが、その種類ごとに、どのレベルの職位の者が情報にアクセスすることが許されるのか、どのようなルール決めが適切なのか』

という点です。

 

誰がどの範囲の情報を扱うのか?

法律や指針等で決まっているもの、例えばストレスチェック制度については、比較的情報の取扱いが明確です。
事業者が取り扱うことが当然想定されているものには、第3回骨子案の筆者マーク部分のようなものが存在します。
しかしそれらについても、「事業者」とは何なのか、具体的に誰を指すのかについては、ルール決めの余地があります。
例えば「高ストレス者面談後の医師の意見書」が会社に出された場合、誰がその意見書を見ても良いのかについては、法や指針で決まったものはありません。
ストレスチェックマニュアルでは、『面接指導結果の取扱い(利用目的、共有の方法・範囲、労働者に対する不利益取扱いの防止等)については、あらかじめ衛生委員会等で調査審議を行い、事業場のルールを決めて、周知しておきましょう。』と記載されおり、労使間で合理的な範囲内であれば自由に決められるのです。
厚労省のストレスチェック規程例では『人事労務部門内のみで保有し、そのうち就業上の措置の内容など、職務遂行上必要な情報に限定して、該当する社員の管理者及び上司に提供する。』となっているため、それをそのまま自社の規定としている会社がほとんどですが、直属上司によるケアを最重視して直属上司も医師意見書を見ることができるというルールにしても、不合理・違法とは言えないでしょう。
(本人同意により会社に提供されたストレスチェック結果については、法的拘束力のある指針にて「当該労働者の上司又は同僚等に共有してはならない」とありますので、上司に見せると違法となると思われます。よって医師意見書を上司に見せるとしても、点数の部分は黒塗りにした方が良いでしょう。)

このように、ストレスチェックのように最近法制化され、労働者のプライバシー保護に関する決まりが比較的明確なものについても、色々とややこしい点が存在します。

さらには、ストレスチェックほど、法律・指針でがっちりとルールが決まっている訳ではないものも多く、それらについても労使間で衛生委員会等で審議して一定の枠内で自由にルールを決めていく流れになろうかと思います。ただ、「労使間で自由に決めて」と言っても、普通の会社では心身の個人情報の取扱いに精通した人材もおらず判断に迷うでしょうから、その際の参考・目安になるようなものを検討会で作って下さるのだと思いますが、骨子案や議事録を見ていると、そう簡単にあっさりと決まるものではなさそうです。

例えば、労働者の健康情報の取扱いに関する実施事項の骨子案が、厚労省事務局から出されていますが、検討会を重ねるごとに、その内容も変わってきています。
第2回検討会での骨子案では、健康情報ごとにどのような対応が考えられるのかをあらわした表が初回の骨子案から追加されましたが、「可能」とか「不可能」とか分かりにくい等の声があがり、第3回骨子案では早速無くなってしまいました。

また、検討会での三柴先生(産業保健法がご専門の大学教授)の以下のご発言からも、それがうかがえます(太字・赤字部分については、筆者が強調)。

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三柴委員:
過去の通達等がいってきたことって、実をいうとちょっと矛盾があるように思うのは、一方では、健診情報等は、実施者が事業者だから、事業者に帰属するのが当たり前であると言っている。だけれども、健康情報なので、プライバシー保護が必要などの趣旨から、情報は加工して、事業者がアクセスするにも、加工情報に限定することが望ましいと言っているものもあったのですね。
そうすると、まず整理しないといけないのは、情報には法的に所有の概念はないのだけれども、帰属という言葉で、誰が一次的に取り扱うべきかは論じられると。実際、健診については、事業者に実施が義務づけられ、事業者が費用を負担していることからも、その結果情報の帰属性はやはり事業者にあると。にもかかわらず、そこにアクセスできる情報を制限することは法的に可能か、また現実的に妥当か、という問題になると思います。
私自身は、実をいうと、健康管理の必要性と、それから情報の帰属性の問題から、情報加工まではいいと思うのですけれども、そのアクセス自体を制限してしまうというのは難しいのではないかと考えているのです。

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つまり、『健康診断の法定項目』という基本的な情報について考えてみても、上記のように法学者から見ても難しい論点もあり、例えば『衛生委員会で労使で話し合って、「産業保健スタッフ以外は健診データを見れないことにしました」』ということにして果たしてOKなのか、何も問題は生じないのか、難しい問題なのです。

 

産業医の責任増大に繋がるか?

例えば、私が少し考えてパッと思いつくだけでも、

『高血圧の人が、月100時間以上の長時間残業をして脳出血で亡くなった』(例えば、システムコンサルタント事件のようなケース)ような場合、どうなるのだろうと思います。

つまり、衛生委員会で労使間で取り決めたルールで、会社が健診データにアクセスすることが禁止されていた場合、会社の責任度合いに影響するのかということです。
上記システムコンサルタント事件の判決でも『このこと(会社の配慮義務)は労働者から業務軽減の申出がされていないことによっても、何ら左右されるものではないというべきである。また、本件においては、医師による業務軽減の指示がされていないか、使用者が選任した産業医が使用者に対して業務軽減の指示をしなかったという点も、一審被告(会社)の前記業務軽減措置を採るべき義務の有無に消長を来すことはないというべきである』という判示されていますが、会社が法定健診項目(血圧)へアクセスできない場合でも、結論は同じなのかということです。

会社としては、責任を回避するために「自分たちは、労使間のルーㇽで、健診の法定項目データも見れないので、高血圧だと知りようがありませんでした。本人も何も言ってこなかったです。就業判定をした産業医も何も言ってこなかったです」と主張しないでしょうか?
データも見れない、産業医も何も言わなかったのであれば、会社に予見可能性がないため安全配慮義務違反は無かったということにはならないでしょうか?

また、会社がデータを見れない以上、産業医がデータを加工した上で会社に情報提供(就業上の配慮の必要性の助言等)したかどうかが重要なポイントになりますが、その場合、産業医の責任に影響を及ぼすことにはならないでしょうか。つまり、「会社が知り得ない状態」になる以上、その部分の責任が、全ての情報にアクセス可能な産業医にかかってくるのではないかということです。
もしかすると、上記のようなケースのご遺族は、会社に責任を問えないとなると、職務懈怠した産業医の責任を問おうということになるかもしれません。また、会社と家族が和解した上で、その費用の一部を、会社が産業医に求償してくるようなケースに繋がる可能性もゼロではないように思います。

まさにこれは、ストレスチェック法制化時にも、多くの産業医の先生方が懸念していた産業医の責任増大論に似ているところがあるように思います。
ストレスチェック制度においては、労働者のプライバシーがかなり強く保護されており、本人の同意なく、結果や高ストレス者であることを会社に伝えてはならない(産業医の言動により会社に推測されてもいけない)ことになっていますので、もし万一労働者に不幸が起きてしまった場合、産業医としては「法的に保護された本人のプライバシーを侵すわけにはいかず、会社に何も言えなかった。」「本人が、面接を希望しなかった。」「ストレスチェックの主目的は、セルフケアであり、病気の発見ではないことは、厚労省も強調している。」などの弁明があり得るかもしれませんが、健診法定項目等については「加工した上で会社に情報提供する」というルート・産業医の取り得る選択肢が残されています(高血圧であることを、会社に絶対知られてはいけない訳ではない)ので、ストレスチェック制度よりも産業医の責任に繋がりやすいのではないかとも思われます。

 

「労働者の心身の状態に関する情報の取扱い」は、今後、産業医による健診の就業判定・事後措置のあり方にも影響してくるかもしれません。今よりも一層、産業医から会社に情報を加工した上で積極的に提供していかなければならなくなるかもしれません。会社の自由な情報収集が制限される以上、会社が安全配慮義務を履行するには、産業医がどれだけ適切に会社に情報提供できるかが重要になってくるため、そこには、より一層の責任が求められると言えるかもしれません。
(また、違う視点から考えると、産業医が機能してない事業場において、会社が情報収集できないルールにした場合、誰も情報を適切に管理できていない状態になり、労働者の安全確保等が不十分となり、労働者のためにならないことにもなりかねません。)

以前のブログでも書きましたが、今回の産業保健関連の法改正で、世間的には高プロでしょうが、個人的に最も注目しているのは「労働者の心身の状態に関する情報の取扱い」についてです。今後も注目していきたいと思います。

いずれにせよ、心身の個人情報の取扱いについては、現状曖昧な部分がかなり多く、適切な取り扱いルールにより、労使・産業医ともに安心して働ける環境作りに繋がっていくことを望んでいます。

運転業務と睡眠不足、睡眠薬

2018-05-14

バス・タクシー・トラック運転と睡眠不足

こちらの国土交通省ホームページでも公表されているように、本年6月1日から、睡眠不足の運転手に運転させてはいけないことが、省令で明確に規定されます。

今までは、旅客自動車運送事業運輸規則(省令)21条で
「疾病、疲労その他の理由により安全な運転をし、又はその補助をすることができないおそれがある乗務員を事業用自動車に乗務させてはならない」とあり、通達で、「『その他の理由』とは、覚せい剤の服用、異常な感情の高ぶり、睡眠不足等をいう」との解釈が出されており、睡眠不足は通達レベルでNGとなっていましたが、今回、省令を改正して、省令レベルでNGとするそうです

持病と運転業務

私はトラック運送会社の産業医もしていますが、メンタル不調で向精神薬(睡眠薬など)を服用している人が運転して大丈夫なのかについては、常に悩みます(今回の省令改正の『睡眠不足』ではなく、『疾病』の話になるのかもしれませんが…)。

特に、

会社:

「なるべくリスクを取りたくない。今回の省令改正の背景にあるように、万一事故が起きた場合の社会からの目は厳しく、少しでもリスクがあるなら、運転から外したい。」

と思っている一方で、

運転手当人:

「運転をやり続けたい。数十年運転手をやって来て、今から事務職に配置転換となっても仕事をできる気がしない。確かに薬を飲んでいるが、運転に支障はない」

と考えているというケース等においては、会社と労働者の思惑が一致せず、産業医としての判断もより丁寧さと慎重さが求められます。

 

私が産業医として意見を求められた場合は、「本人の病状」+「本人の意向」+「会社の意向(≒どこまでリスクを取れるのか)」を総合的に勘案して意見を述べるようにしています。

 

「本人の病状」

眠気等の運転に支障のある症状が無いことが大前提です。

その際、会社としては、産業医の判断以外に、やはり本人の病状を一番よく知っていて薬も処方している主治医から「運転に問題はない」との判断(診断書)をもらいたいところですが、私の経験する限り、「運転に支障がない」との診断書を出してくれる主治医は半数以下のように思います。
やはり近年、医療界もリスクに敏感になっていますので、運転OKという意見を書面で出して、万一事故が起こった場合に主治医の責任になるのは怖いとのことで、診断書の形では書いてくれず、「そこは会社にも産業医がいるでしょうから、そこと話し合って、会社側で決めて下さい」と仰る先生も多数おられます。

 

そこで、上記も含めて、望ましい順にあげると、

①主治医に、運転に関する意見を書面(意見書や診断書)で発行してもらう

➁主治医に、口頭にて意見を述べてもらい、その内容を本人から聴取する。可能であれば、本人同意の下、人事担当者が診察に同席して話を聞ければなお良い。

➂ ①、➁も無理な場合は、産業医が病状を把握したうえで、産業医のみの意見で進める。

(①、➁が可能でも、それを踏まえ産業医が意見を述べるのは当然)

 

となろうかと思います。

 

「本人の意向」

本人の意向も大切です。運転業務に対して本人が肯定的に捉えているのか、否定的に考えているかによって、会社の判断も変わり得るからです。

例えば、上記の例で言うと、「本人が運転したい。事務作業は難しい。」と言っているが故に、会社の意向と一致しないのであって、「年齢的に運転はきつくなってきていたので、事務職でもOKです」「運転には不安があるので、避けたいです」なのであれば、本人にとっても会社にとっても事務への配転で良いということになります。

 

「会社の意向」

端的に言うと、「会社として、どれだけリスクを許容できるか」ということです。

「人手不足なので、可能な限り運転業務に就かせたい」と考え、ある程度のリスクは許容する会社もあれば、「リスクが少しでもあれば、運転を禁止し、リスクゼロを目指す。」「薬が事故にどれくらい影響したかに関わらず、向精神薬を服用している当社の社員が、運転して人身事故を起こすことなど考えられない、あり得ない。」と考える会社まで様々です。

リスクをゼロにするには、向精神薬を内服している場合は一律運転禁止とするしかありませんが、そのような対応に運転業務をしたい労働者が異を唱え万一労使トラブルとなった場合、会社の一律な措置は正当と判断されるのでしょうか?

多くの向精神薬の添付文書(薬の説明書)には、「本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること」との記載があり、これだけ見ると内服していることのみもって運転禁止としても問題ないように思うかもしれません。

しかし、これについては製薬会社が過大にリスクを評価しており一律禁止はやりすぎではないかとの意見もあります。

実際、日本うつ病学会から日本製薬工業協会あてに「向精神薬が一様かつ持続的に、運転技能を低下させるという証左は見当たりません。」、「向精神薬と運転技能の関係を明らかにし、添付文書の改訂(例:自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には十分注意させること)、あるいは付記(例:ただし、眠気やめまい等が自覚されなければ、十分注意した上で操作に当たること)についてご高配を賜りたい」という要望書が出ていたり、日本精神神経学会も「添付文書の不適切・非医学的な記載について、今後改善を目指し、厚生労働省や独立行政法人医薬品医療機器総合機構への働きかけを行っていく予定である。」としています。

 

よって会社としては、薬を飲んでいるということだけで運転禁止と判断するのではなく、産業医及びできれば主治医の意見も聴取して、判断すべきといえます。運転業務を禁止することは、本人のキャリアや賃金等にも影響することであり、慎重さが求められるといえるでしょう。

産業医の中立性について

2018-05-10

法改正で、産業医の中立性・誠実義務が法制化へ

前回のブログ記事においても紹介しましたが、労働安全衛生法の改正案が現在国会で審議中であり、成立すれば来年度から施行される予定です。

その中では、「産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行わなければならない」との条文が追加されています。
誠実に職務を遂行するという、医師・産業医という専門職であればごく当たり前のことが、わざわざ法律に追加される理由としては、産業医の中立性が疑われるような事件が度々起こっているからです。

労働法関連の法改正等の重要事項に関しては、厚労大臣の諮問に応じて労働政策審議会で調査・審議されることになっていますが、この条文追加に際しても当然ながら審議が行われています。その中でも、有識者からのヒアリングが行われており、誠実職務遂行義務の追加に関して「倫理的な事項であり、当然産業医に求められている内容なので、あえて法令に記載する必要性は感じない。むしろそのような規定を設けざるを得ない問題が生じていることに懸念を覚える。」との意見も記載されています。

 

ブラック社労士問題、ブラック産業医問題

そのような状況の中、またも目を疑うようなニュースが、本日共同通信社よりリリースされていました。以下、引用します。

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パワーハラスメントで休職後、復職を認めずに退職扱いとしたのは不当だとして、社会保険労務士らの事務組合で働いていた女性(44)と男性(41)が、職員としての地位確認を求めた訴訟の判決で、横浜地裁は10日、退職を無効と認め、未払い賃金の支払いを命じた。

新谷晋司裁判長は、産業医が「統合失調症」「自閉症」と判断し復職不可としたのは「合理的根拠がなく、信用できない」と指摘。健康状態は回復していたと認定した。

―――――――――

これだけ見ると、産業医が病名を付けているように思われます(判決文を見ていないので断定はできず、詳細はわかりませんが)。
神奈川新聞の記事を見ると、主治医の診断とは違う病名を付けたのかもしれません。過去のパワハラ裁判については、判決文が公表されていますのでそれを見ると、主治医からは「うつ状態」と診断されているようです。

こちらの記事にも載せていますが、産業医は、労働者に対して基本的には診断して病名を付けることはしません(逆にいうと、産業医が主治医とは違う病名をあえて付けて来たら、労働者の方は警戒した方が良いでしょう)。

特に、統合失調症や自閉症という診断は、基本的には完治ということはない等の側面から、本人やご家族への影響が大きく、産業医が主治医の診断を否定して病名を付けることはまずありえません。もし万一あるとしても、後々トラブルになる可能性も高いので、相当慎重に、確実な根拠をもって診断しなければなりません。主治医の診断を否定して病名を付けるのですから、当然です。
また、この産業医は、統合失調症と自閉症の合併例と診断しているのか、診断を途中で変更しているのかはわかりませんが、いずれにしてもその判断は精神科専門医であっても相当の経験が必要であり、主治医以外が診断することには慎重であるべきと言えるでしょう。

今回のケースのように、パワハラ裁判で労使間で相当揉めている状況下で、あえて統合失調症や自閉症という主治医と違う診断を下して、復職不可と判断するこの産業医の先生は、色々な意味で本当に凄いと思います。

 

ブラック社労士が3年前に問題になりましたが、今回は社労士事務組合と産業医のコラボレーションで、ついにここまで来たかという印象です。
医療の専門家ではない裁判官から、診断について「合理的根拠がなく、信用できない」と言われてしまう産業医ってどうなのでしょうか。神奈川新聞の記事が本当なら、「到底信用できない」と『到底』まで付いており、医師の診断がそこまで言われてしまうとは、余程のことです。

また、事務組合の社労士の誰かが、労務問題の専門家として、このやり方はまずいと止めれなかったのでしょうか。

産業医は信用できるのかという問題になりかねない

このようなことが頻発すると、労働者は産業医全般を警戒し、まともに話をしてくれなくなります。

真面目に活動している大部分の産業医にとって、非常に迷惑なので本当に止めて頂きたいと感じます。

また、厚労省や医師会等は、偏った意見を出すことは倫理的にも許されないことに加え、産業医自身のリスクにもなること、産業医はあくまで労使間から一定の距離を持って中立性を保つことを、産業医に対して教育すべきではないでしょうか。「人事の仕事にもフルコミット。肩たたきも引き受けます。」というようなことをホームページで公表して売りにしている産業医もいる現状では、産業医への社会的信頼はかなり危ういのではないかと思います。企業側も、産業医は首切りに利用でき、それをするのが良い産業医だと、誤解しかねません。

会社は、根拠のない偏った意見を出す産業医を雇うことは、リスクのあることだと認識すべきです。労働者を解雇するために、産業医を利用してうまくいったと思っているのかも知れませんが、結局出るところに出ればそれが露見し、「産業医を利用して解雇するブラック企業」の汚名をかぶることになるのです。そのような事は今の時代、インターネット上ですぐに広がりますので、人材採用に相当の支障が出てますし、現在働いてくれている労働者に対する産業保健に関しても、かなりの悪影響が出るでしょう。

試し出勤・リハビリ勤務実施の注意点

2018-02-10

試し出勤・リハビリ勤務とは

試し出勤やリハビリ勤務は、労働基準法など法律で定められた制度ではありませんので、明確な定義はありません。
一般的には、長期間職場を離れている労働者が、スムーズに本来の職務に復帰できるよう、復職前や復職後に、一時的に業務負荷を軽減する等して様子をみることを言います。
復職前のものを試し出勤、復職後のものをリハビリ勤務と呼ぶことが多いですが、名称よりも、後述のように、試し出勤等をどのように行うかルールを定めた場合の、その中身の方が重要です。

 

厚労省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の中には、『試し出勤制度等』という言葉が出てきますが、試し出勤制度等として、以下の3つが挙げられています。

①模擬出勤:就業時間に合わせてデイケアや図書館などで過ごすこと

②通勤訓練:自宅から職場の近くまで来て、職場付近で一定時間過ごしてから帰宅すること

➂試し出勤:職場復帰の判断等を目的として、本来の職場などに試験的に一定期間継続して出勤すること

 

このように、一概に試し出勤制度等といっても様々な概念が含まれますが、いずれにも共通するポイントとしては、手引きにも書かれているように、

「これらの制度の導入にあたっては、処遇や災害が発生した場合の対応、人事労務管理上の位置づけ等についてあらかじめ労使間で十分に検討し、ルールを定めておきましょう。」

「作業について使用者が指示を与えたり、作業内容が業務(職務)に当たる場合などには、労働基準法等が適用される場合があることや賃金等について合理的な処遇を行うべきことに留意する必要がある。」

という点です。

制度設計上、特に注意すべき点

試し出勤・リハビリ勤務を行う場合の制度設計として、注意すべき点は多数存在します。例えば、

・試し出勤を開始する条件、期間、打ち切る条件は?

・試し出勤中の事故が起きたら労災適用されるのか?

・試し出勤中、どの職場で、段階的にどのような業務負荷(勤務時間と内容)をかけていくのか?

・試し出勤中の賃金は?

・体調に対するフォローは?(体調悪化時、すぐに上司等に報告させ、周囲も本人の体調に十分注意する)

などが挙げられます。

 

それらを決める上で、まず決めないといけないのが

「試し出勤・リハビリ勤務を復職前に行うのか、それとも、正式に復職した後に行うのか」

ということです。

 

試し出勤は復職前、復職後、どちらが良いのか

復職前に行う場合

復職前に試し出勤を行う場合、制度の意味合いとしては、「正式に復職できる状態にまで病状が回復しているか、会社として情報を集める。情報を集めて、より慎重に復職可否を判断する。」という面が強くなります。

主治医が復職可能と判断していても、厚労省復職支援手引きに「主治医による診断書の内容は、病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、それはただちにその職場で求められる業務遂行能力まで回復しているか否かの判断とは限らないことにも留意すべきである。」とあるように、実際には業務できるレベルまで回復していないケースも散見されます。
まずは職場に来てもらって、実際にどの程度のことができるか、会社として情報収集してから復職判断を行うことができるのは、この場合の長所です。(ただし、「試し出勤中は無給」→「使用従属関係に無い純粋に任意の作業でないといけない」→「純粋に任意というためには、試し出勤中の状態を復職判定に使ってはいけない」という説を唱える学者の先生もあり、この辺は実はビミョーな難しい問題なのです。)

一方、後日記事をアップしますが、復職前のため一般的には賃金が支払われていませんので(復職させていない状態のまま、賃金を支払って休職者を指揮命令関係に置くのも可能なのかもしれませんが、私が知っている復職前に試し出勤をさせるケースでは、傷病手当金との関係等から多くの会社が無給としています)、「職場に来た労働者に、どの程度のことさせて良いのか、判断が難しい」、「上司がどこまで本人に指示できるのか、本人の不十分な部分(例えば遅刻する等)に注意できるのか、判断に迷ってしまう」という欠点があります。ここを間違えてしまうと、賃金支払い義務が生じてきます。
 後日の記事でも取り上げる、試し出勤中無給とされていたケースが最低賃金法違反になるか争われたNHK名古屋放送局事件(名古屋地裁平成29.3.28)でも、上司が試し勤務中に遅刻してきた労働者に注意した際に、労働者が「私って戦力にカウントされているのか?」「要するに、ちゃんと通常の仕事どおりにもう出てこい、出てきてちゃんと仕事しろということ?」と質問・反論してきた時、上司がどう答えたかが取り上げられています。こう問いかけられた時、会社からしっかりと試し出勤の趣旨や注意点の説明を受けている場合を除き、自信を持って返答できる上司は少ないのではないでしょうか。

その一方、労働契約上の労務提供となり賃金支払い義務が生じることを避けるために、安全をとって負担にならない軽い作業ばかりさせても、「ごく軽い作業しかさせていないから、労務遂行能力が回復しているのか分からない。毎日、会社に来れるかどうか程度しかわからない。」というジレンマが生じることになります。

 

復帰後に行う場合

一方、試し出勤を復職後に行う場合には、既に復職は決まっていますので、復帰後の再発防止の意味合いが強くなります。
すなわち、復職後いきなり通常勤務を行っては本人にとって負担が強く再発してしまう可能性があるので、軽負荷から開始して徐々に負荷を上げていこうという意味合いです(まさに「リハビリ」的な意味合いであり、リハビリ勤務と呼ばれることも多い)。

この場合の長所としては、上述の上司の迷いが少なくてすみます。例えば、もし本人が遅刻したり仕事中にウトウトしたり、業務パフォーマンスが不十分な場合には、当然のことながら注意をして改善を求めても問題になりません。また、出勤途中に事故が起きた場合は、既に復職しておりそれは通勤ですので、労災が適用さうるのは明白です。

一方、一旦正式に復職していますので、復帰後の業務遂行が不十分だと会社が判断しても、再休職させるにはハードルが高くなります(残りの休職期間がなく、再休職判断イコール退職や解雇になる場合はなおさら)。再休職させるには、再休職に関する規程の整備や、労務遂行状況に対する上司等の正当で客観的な評価が求められます。産業医面談や主治医への意見聴取も重要になってくるでしょう。
また、業務軽減を認める期間を予め区切る等しなければ、いつまでも軽負荷のまま経過することにもなりかねません。復職して1~2年経つものの、軽作業しかさせられず、遅刻・早退が頻回にみられる状態が続いて、上司も同僚も疲弊してしまっているケースも時々見かけます。

 

このように、試し出勤を復職前・復職後に行うことには、会社にとってそれぞれ一長一短あり、どちらが良いとは一概に言えません(もちろん、両方を行うこともできます。)

 

以下私見になりますが、

・試し勤務を復職前に行うのであれば「遅刻や欠勤の無い安定した出勤と、比較的簡単な作業ができるかどうかのみ確認できれば良い」と割り切る。通常の労務提供ができるかどうかの判断は、職場復帰をした後に行う。
(試し出勤をさせた結果、復職不可と判断するのであれば、通常の労務提供(債務の本旨に従った労務提供)ができないと会社が判断しなければならないが、復職前には軽易な作業しかさせられないため、復職不可と判断できるのは、出勤が不安定(欠勤、遅刻、早退)か、軽易な作業すらできない場合に限られるから。)

 

・復職後に試し出勤(リハビリ勤務)行い、もし回復が不十分で労務提供が完全にはできないことが判明した場合には会社として再休職も検討して行くのであれば、再休職となる基準・ルールを整備し、本人の働きぶりに対する上司の評価を頻繁に明確・公平に行い、本人にも都度フィードバックする。産業医による復職後のフォローも徹底する。

 

のが良いのではないかと考えます。

【ストレスチェック】高ストレス者以外から面接指導対象者を選ぶことはできるのか

2017-11-24

2年目のストレスチェック

今月末(2017年11月末)までが、法令により義務化されたストレスチェックの2回目の実施期限となります。私のクライアント先の企業でも、9月~11月にかけて実施するところが多く、その対応のために忙しくさせて頂いています。

2年目ともなると、会社の担当者も産業医も大分慣れてきた部分もあるかと思いますが、新たに疑問に感じる点も出てくるのではないでしょうか。
最近、産業医をしている知人の医師から、こんな質問を受けました。

「高ストレス者の中から、面接する人を選ぶのが普通だと思うけど、高ストレス者じゃない人の中からでも面接対象者を選んでも良いの?

 

確かに、昨年度から私自身も多少疑問に感じていた点でもありますが、この点に明確に言及しているストレスチェック関連の書籍やインターネット上の情報は、私の知っている範囲では見たことがありません。そこで、詳しく調べてみました。

法令等の文言をチェック

まずは、法令等がどのように定めているのかを、チェックしてみましましょう。

法→省令(規則)→指針→マニュアルの順に細部まで定められていく構成になっていますので、順に見ていきます。

(条文中のカッコ内の文言は、私による補足です。)

 

労働安全衛生法 66条の10第3項
事業者は、前項の規定による通知(←個人結果返却のこと)を受けた労働者であって、心理的な負担の程度が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件(←下記)に該当するものが医師による面接指導を受けることを希望する旨を申し出たときは、当該申出をした労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。

 

労働安全衛生規則 52条の15
法第66条の10第3項の厚生労働省令で定める要件は、検査の結果、心理的な負担の程度が高い者であって、同項に規定する面接指導を受ける必要があると当該検査を行った医師等が認めたものであることとする。

ストレスチェック指針
規則第 52 条の 15 の規定に基づき、事業者は、上記7(1)ウ(イ)に掲げる方法(←点数だけで選定するか、補足的面談も組み合わせるかの方法)により高ストレス者として選定された者であって、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた者に対して、労働者からの申出に応じて医師による面接指導を実施しなければならない。

 

ストレスチェック指針の赤字分が時に決定的かと思いますが、これらの文言を見ると、あくまで高ストレス者の中から、実施者が要面接者を選ぶと読み取れます。

 

さらに、厚労省ストレスチェック制度関係Q&Aにも以下の記載があります。

Q12-2 面接指導対象者は、実施者の判断で、高ストレス者の中から、実施者が判断して絞り込むということになるのでしょうか。

A 面接指導の対象者は、事業場で定めた選定基準に基づいて選定した高ストレス者について、実施者が判断していただくことになりますので、例えば、補足的に面談を行った場合などについては、その面談結果を参考にして実施者が絞り込む場合があり得ますし、高ストレス者全員をその評価結果を実施者が確認の上で面接指導対象者とする場合もあり得ます。

この記載からしても、面接指導対象者は、高ストレス者の中から選定するのが前提だということが読み取れます。

 

一方で、マニュアルには違う記載も

しかし、よくよく見てみると、厚労省のトレスチェック制度実施マニュアルには上記とは違った記載があります。

マニュアルの48ページの「面接指導対象者の確認」の部分には以下のように書かれています。

 

(2)ウ(P38)で選定された高ストレス者を含すべての受検者について医師による面接指導を受ける必要があるかどうか、実施者が確認します。

この文面からは、すべての受検者に対して、実施者が要面接かどうか確認する、すなわち高ストレス者に該当しなかった人に対しても要面接と判定しても良いとも読み取れます。

結論としては、高ストレス者以外から選定してもOK

結局どっちなのか、法令や実施マニュアル等からは分かりませんでしたので、担当行政機関に問い合わせたところ、

 

「厚生労働省としては、実施者が必要だと判断すれば、高ストレス者以外から面接指導対象者を選定しても差し支えないという立場」だそうです。
その根拠は実施マニュアルの48ページの記載だとのことです。

 

私もその考え方のほうが妥当だと思います。トータルでの点数はそこまで悪くなく高ストレス者には該当していないものの、ある一部の点数だけ極端に低い等で気になる人がいた場合には、実施者の判断で要面接と判定したい場合もあるかも知れません。その場合でも、実際に面接を申し出るかどうか(会社に自分の結果を公表するかどうか)の自由は受検者側にあるので、プライバシー保護の観点からも特に大きな問題はないと思われます。高ストレス者以外から要面接者を選ぶことをわざわざ法的に禁止する必要もないでしょう。

今週は自殺予防週間~ストレスチェック結果から考えるラインケアの重要性~

2017-09-13

自殺者予防の取り組みと自殺者数の推移

毎年、9月10日からの1週間は自殺予防週間とされ、国、地方公共団体等が連携して、自殺予防のための啓蒙活動が行われています。駅のポスターやインターネットの広告等で見かけた方も多いのではないでしょうか。

平成 10年以降、年間自殺者数が3万人を超える状況が続き世界的にも高水準であったため、国は平成18年に自殺対策基本法を施行し、平成19年には自殺総合対策大綱を策定し、自殺予防週間等の取り組み・キャンペーンを行ってきました。

その甲斐あってか、平成24年からは自殺者数が3万人を切り減少傾向が続いており、昨年(平成28年)は約21000人となっています。

 

ゲートキーパーとは

自殺予防を行う上で、国は「ゲートキーパー」の役割を重視しています。本年度の自殺予防週間の政府広報ポスターにも、真ん中に大きく「ゲートキーパー」の文字が見られます。

ゲートキーパーとは、

自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応(悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る)を図ることができる人のことで、言わば「命の門番」とも位置付けられる人

のことを言います。 

ゲートキーパーは何も医師等の専門職である必要はありません。むしろ、身近な人が異変に気付き、専門職等に繋げることが重要です。

ストレスチェックの実施状況

従業員数が50人以上の事業場においては、ストレスチェックが義務化され、昨年11月末までに実施し、その結果を労働基準監督署へ届け出ることになりました。その届出の集計結果が今年の7月に発表されました(集計結果は こちらの厚労省HPをご参照下さい) 

それによると、受験者のうち医師面接まで繋がった方はわずかに0.6%に過ぎません。

自ら希望すれば医師面接を受けられる高ストレス者は、受験者の10%程度(労基署への報告書には高ストレス者の数を書く欄はありませんので正式な数は不明ですが、ストレスチェック受託機関の発表によると、いずれも約10%程度となっています)ですので、高ストレス者のうち医師面接を自ら希望したのはわずか約16人に1人に過ぎません。 

申出率が低くなることは、こちらの記事でも取り上げた通り、諸々の理由から予想されたことではありますが、

自らシグナルを発して医師面接につながろうとすることは、職域においては、かなりハードルが高い

と言えます。

 

職場におけるラインケアの重要性

そこで重要になってくるのは、ラインケアです。

職場におけるメンタルヘルス対策には、①セルフケア ②ラインケア ③事業場内産業保健スタッフ等によるケア ④事業場外資源によるケアという「4つのケア」が存在します。 

4つのケアいずれも重要ですが、上記のように自ら不調を申し出ることはハードルが高いことから考えると、職場の周りの人、特に管理監督者が気付き、適切な配慮・対応を行うこと(=ラインケア)が最も重要といえます。これは自殺対策におけるゲートキーパーの重要性と類似しています。

早めに本人の不調に気付き、適切なケアを行えば、病気の悪化や休職になってしまう事態を避けられる可能性があります。

ストレスチェックが義務化されたことにより、集団分析と職場環境改善に注目が集まっていますが、まずは基本的なラインケア教育・研修がしっかり行われているか、上司等がつなげる先となる産業医などの産業保健スタッフが機能しているかを確認しましょう。

今年6月の労働安全衛生規則改正に関して、通達内容も含めた注意点

2017-06-20

平成29年6月1日より、労働安全衛生規則(以下、省令)が改正され施行されています。

産業医に関する改正としては、大きく3点あります(職場巡視頻度については昨年11月の時点で既に記事にしています のでご参照下さい)。

➀産業医の職場巡視頻度について

➁健診結果に関して就業判定をする上での医師への情報提供義務

➂産業医に対する長時間労働者の情報提供義務

 

労働衛生に関する雑誌やインターネット上では、今回の省令改正についての記事も多数見られますが、私の見た限り、省令改正に関する通達(基発0331第68号)についてまで踏み込んで記載しているものは少なかったため、今回はその点についてまとめてみることにします。

 

➀産業医の職場巡視に関して

産業医の職場巡視を2か月に1回とするためには、省令上は以下の要件が必要になります。

 

1.事業者(会社)の同意

2.衛生管理者の巡視結果の産業医への提供

3.その他、衛生委員会での調査審議を経て、会社が産業医に提供することにした情報の提供

 

そして通達において、1~3について詳しく記載されていますので、順に見てみます。

 

会社の同意について

会社の同意とだけ聞くと、社長や人事・総務部長等の労働衛生に関するトップの人の同意でOKなように感じてしまいますが、通達上は、衛生委員会での調査審議の上で決定するようにとなっています。

 

ストレスチェックに関してもそうですが、職場の労働衛生に関する事項については、労使がともに参加している衛生委員会で調査審議して決めるという傾向があるように思います。しっかりと衛生委員会を開催することが重要です(衛生委員会の重要性については こちらの記事もご参照下さい。)。

 

また、一回OKとなれば、その後もずっとOKという訳ではなく、一定期間を定めて、その都度産業医の意見を聞き調査審議し直すことが必要であるとされています。

 

衛生管理者の巡視結果について

衛生管理者は週1回以上職場巡視をしなければならないと法令で定められていますが(安衛則11条)、そもそも実施されてますでしょうか?実施していない会社も多数存在するのではないかと思いますが、確実に実施するようにしましょう。

もし、衛生管理者が週1回以上の職場巡視をしていない場合は、産業医の職場巡視を2か月に1回にすることはできません。

 

また、巡視結果については、以下の事項を含まなければなりません。

・巡視の日時、巡視した場所
・安衛則第 11 条1項の「設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるとき」と判断した場合における有害事項及び講じた措置の内容
・その他労働衛生対策の推進にとって参考となる事項 

それらの情報を産業医に月1回以上提供してはじめて、2か月へ1回への変更が可能となります。 

実務的には、上記事項を含んだチェックシートのようなものを作り、毎月産業医に提供するのが良いでしょう。

(全くの余談ですが、今回の産業医の月1回と同じく、そもそも衛生管理者が週1回職場巡視する意味はあるのかという議論にはならないのでしょうか…。)

 

その他の情報について

まず、今回の省令改正点のうちの一つである「産業医に対する長時間労働者の情報提供」がしっかり行われていることが必要です

 

その上で、どのような情報を産業医に提供することにするかは、事業場の実情に応じて、適切に定めれば良いとされていますが、通達には一例として以下の情報が挙げられています。

・健康への配慮が必要な労働者の氏名(安衛法66条の9で規定)及びその労働時間数
・新規に使用される予定の化学物質・設備名及びこれらに係る作業条件・業務内容
・労働者の休業状況

 

➁健診結果に関して就業判定をする上での医師への情報提供について

医師から求められた場合に、会社が医師へ提供すべき情報は以下となります。 

労働者の作業環境、労働時間、作業態様、作業負荷の状況、深夜業等の回数・時間数など

この点については、そもそも健診結果に対する医師の意見聴取をできていない会社も相当数存在すると思われますので、確実に実施するようにしましょう(こちらの健診に関する記事もご参照下さい。)

 

なお、現状(省令改正前)でも、上記情報を医師から求められた場合、情報提供を拒否して秘密にする企業もあまりないと思いますので、この改正点は実務上それほど大きな影響はないように思います。

 

➂産業医に対する長時間労働者の情報提供について

休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた時間が、1月当たり100時間を超えた場合は、その労働者の氏名及び超えた時間に関する情報を産業医に提供しなければならないこととなりました。

 

そして注意しなければならないのは、そのような労働者がいない(該当者なし)の場合も、その旨を産業医に伝えなければならない点です

 

また、健診の就業判定に関する情報提供とは違い、長時間労働者の情報は、産業医から求められなくても、会社から産業医に情報提供しなければならない点も注意しましょう。
「産業医から聞かれなかったので、伝えませんでした」はNGですので注意が必要です

しっかり産業医とコミュニケーションを取り、会社側から情報提供するようにしましょう。

 

今後も続く、産業医の業務と責任の拡大

今回、産業医の業務について省令改正が行われましたが、今週日曜日の日経新聞1面にも特集されていたのでご存知の方も多いかも知れませんが、こちらの厚生労働省資料にもある通り、今後も法改正が予定されています。

昨年の電通の過労自殺事件を契機に、長時間労働対策(労基法改正も予定)・働き方改革の流れが世の中全体で進んでおり、産業医の重要性や活動を強化する方向になっています。 

名義貸しの産業医や、副業として活動している産業医ではなく、産業医業務に特化したプロの産業医をお探しの企業様は、お気軽に当社までお問い合わせ下さい。

【メンタル不調者の復職】半日勤務・短時間勤務・軽作業が必要という主治医診断書について

2017-03-12

私は精神科産業医 兼 特定社労士という立場でお仕事を頂いている関係上、労働判例を読む機会を多く持つようにしています(単に読むのが好きだというのもあるのですが)。

「労働判例」の雑誌もよく読みますが、号によっては、掲載されている判例の多くが労働衛生、特にメンタルヘルスに関するものであったりします。(直近の3月1日号を見ても、大見出しの3つの判例は➀無断欠勤で懲戒免職 ➁警備員の脳出血 ➂長時間労働による精神疾患発症・自殺というラインナップで、3つのうち2つが健康関連です)

 

印象的な裁判例

そんな中、過去に読んだ判例の中で、タメになった判例の一つに、I商事事件(東京地裁 平 25.1.31判決)があります。

その事件の概要をごく簡単にまとめると以下の通りです。

・I商事の総合職のXさんが、双極性障害(躁うつ病)のため、休職するに至った。

・休職期間満了の約2か月前から、トライアル出社をするも、会社は最終的には病状回復が不十分であるとして復職を認めず、退職となる。

・退職は無効との訴えをXさんは起こすが、認められなかった。

 

弁護士の先生方の解説

この判例に対する、弁護士の先生等の解説・ポイントには、以下のようなことが挙げられています。

 

➀復職可能性を検討すべき職種は、あくまで総合職の中

休職者が復帰する際、元の職場に戻れない病状であるが、他の職場・職種なら可能かもしれない場合、会社はどこまで範囲を広げて復帰後の職場を探す義務があるのでしょうか?

 

例えば私が、病院と勤務医として労働契約を結んでいる場合において、何らかの理由(例えば医療ミスのトラウマ)で私が医業をできなくなったとして、受付窓口の事務員ならできると私が希望した時、病院は私を事務員として雇い続ける義務があるのかという問題です。
 

本判例において裁判所は、「復帰時に検討すべき職種は、あくまで総合職内で」という判断を示しました。総合職として労働契約を結んでいるのだから、あくまで総合職として想定される職種・職場内で検討すればよく、一般職まで広げて検討する必要はないということです。

そして、I商事の総合職はどんな仕事でも
「管理職および将来管理職となることを期待された幹部候補の正社員であり、非定型的な役務を提供し企業が享受する具体的な利益を考慮したうえであらゆる役務に臨機応変に対応することが要求される」
「社内外の関係者との連携・協力が必要であり、その業務遂行には、対人折衝等の複雑な調整等にも堪え得る程度の精神状態が最低限必要とされる」
ため、Xさんはそこまで回復していないと判断されてしまいました。

 

他の裁判例では、なるべく広い範囲で、本人ができる仕事を探してあげて雇用を継続しなさいよという判断が多いですので、さすが誰もが憧れるエリート集団である総合商社の総合職(高給な分、かなりハードワーク)は甘くないといったところでしょうか。
普通の会社であれば、裁判の結果も違っていたのかもしれません。

➁復帰が可能であることを証明するのは誰の責任か

復職可能性(休職事由の消滅)の立証責任が労働者側にあると明示した点も、本判決のポイントであるとされています。

ただ、実際には、企業側も労働者が働ける状態ではなかったことを立証しなければならないことを免れる訳ではなく、産業医の判断や、トライアル出社中の勤怠・成果等の記録も重要になってきます。

 

私なりの視点~時短勤務という主治医診断書など~

弁護士の先生が挙げて下さるポイントは上記のようなものですが、私はあえて少し違った角度から、私なりに「へぇ」となった点を挙げてみたいと思います。
それは、主治医の診断書内容に対する、裁判所の解釈です。

 

主治医の先生は、会社に対し以下の内容の書かれた診断書を提出しています。

『就業上の注意点:①再発防止のために,気分安定剤の規則的な服用が必要である。②トライアル出社の方法としては,午前中,午後2~ 3時,定時迄と,徐々に勤務時聞を延長していただくことが望ましい。』

そして、この記載が、Xさんが病状回復していたかどうか裁判所が判断する際に、Xさんにとって不利な証拠となっています。

具体的には、裁判所は、

『職場復帰する際の就業上の注意点として,定時勤務ではなく時短勤務から開始するのが相当であると指摘しているのであるから本件トライアル出社開始時点の原告の病状について,必ずしも治癒・寛解に至っていると診断していたものではなく精々本件トライアル出社ができる程度に病状が安定していると判断していたにすぎず,被告の総合職として,債務の本旨に従った労務提供ができる程度に病状が回復したと判断していたわけではないことは明らかである』と述べています。

 

さらにXさんにとって悪いことに、別の主治医M医師(当時の主治医からXさんの治療を引き継いだ先生)が、裁判所に対する意見書に、

『精神疾患の患者が自宅療養によって回復するのは7,8割程度であって,復帰の初めからほかの従業員と同じ業務をこなすことを原告に期待すべきでなく,時短勤務から始めるべきである』と書いてしまいました。
 
この意見書に対し裁判所は、

『M医師は,本件トライアル出社開始時において,原告(Xさん)がいまだ回復していなかったことを自認しているともいうべき』と厳しい判断をしているのです。

 

裁判所は、その他諸々の証拠等も含めて、Xさんは回復していなかったと判断したのであって、上記の主治医の診断書・意見書のみで判決が決まった訳ではありませんが、Xさんにとって不利に働いた可能性は否定できません

 

私も産業医として実務を行う中で、「半日勤務から開始する必要がある」等と書かれた診断書を見ることがありますが、果たして主治医の先生は、このように万一労使トラブルになった際に、自分の診断書が患者さんにとって不利な証拠となる可能性があることを想定されて書かれているのだろうかと感じてしまいます。

なんとなく、「半日勤務からの方が、負担が軽そうだから」とか、「患者さん本人が希望するから」等の理由で、とりあえず書いておこうというのは患者さんにとって不利益になる危険性がありうると言えるでしょう。また、そのような診断書を受け取った会社に「まだ十分回復していないんだな」という印象を与えることにも繋がりかねません(後述)。

 

もし、どうしても半日勤務からと書くのであれば、患者さんの不利益になるのを避けるため、

「半日勤務からの開始が望ましい。但しその趣旨としては、現時点でフルタイム勤務が可能な状態まで回復しているが、より確実に職場に復帰できるようソフトランディングの意味合いから勧めるものである。」

などと書くべきなのかもしれません。

 

これを企業側の視点から見ると…

逆に企業側からすると、「半日勤務・時短勤務が必要」との主治医診断書は、未だ回復不十分であるとして復職を認めない判断を企業がする場合、その判断が正当であることを証明するための証拠を、わざわざ主治医が書面にして送ってきてくれたことになります(皮肉っぽい言い方ですが…)。

また、もう一つ気を付けたい点は、上記の裁判所の判断からもわかるように、一般的には

「半日勤務・時短勤務からの開始が必要」=「まだ十分には病状は回復していない。」

との解釈になるのです。

よって、「半日勤務・時短勤務が必要」と書かれている人を、職場復帰させる判断をした場合、通常にも増した安全配慮義務が会社には課されることになります。

なぜなら、
『病状が悪いと認識しながら職場復帰OKと判断したのだから、会社として当然ながら極めて手厚いフォローをしてあげるのが筋でしょう』
となるからです。
具体的には、毎日上司が手厚く本人をフォローしたり、すぐに産業医に相談できるような体制が求められます。

よって、このような充分なフォロー体制が整っていないにも関わらず、「半日勤務・時短勤務が必要」と書かれた不調者を安易に復職させることは、会社にとって非常に危険なことであると認識する必要があると言えます。

ストレスチェック・高ストレス者面接のトラブル回避のために

2017-01-28

ストレスチェックが義務化され、昨年11月末までに検査を実施する義務が企業に課されました。

その後、12月~今年1月にかけて、私自身ストレスチェック高ストレス者面談の依頼もたくさん頂き、かなり忙しくなりましたが、最近はピークが過ぎて落ち着いてきました。

そこで、ストレスチェック初年度を受けての感想、特に、高ストレス者面談を行っている先生方にお伝えしたいことを書いてみたいと思います。

(この記事は、企業向けではなく、医師向けの内容となっております。)

 

面接を希望する人が少ないとか、集団分析をして組織改善につなげる必要があること等は、当ホームページの過去の記事でも書いてきましたし、ちまたの記事等でも散々書かれていることですので、今回は割愛します。

 

心配になる企業の対応

産業医として、実際にストレスチェックに関わり、高ストレス者面談を多数行ってきましたが、その中で企業(又は外部機関)の対応として『それで大丈夫なの!?』と驚くような経験もありました。

 

とある従業員数千人レベルの大企業は、外部機関が提供しているストレスチェックシステムをそのまま利用していましたが、従業員がネット上で受験する際に一番初めに出てくる画面が、『あなたは、いまから受けるテストの結果を、会社に提供することに同意しますか?』であり、そこでYES/NOに答えなければ、検査に移れないというのもありました。
(ストレスチェック制度上、受検結果が出る前の段階で、結果提供の同意・不同意を会社が取得することは認められてないのですが……)

 

大企業でもこのような状況ですから、中小企業ともなると、真面目にしっかりと行っている企業が大多数ではあるものの一部においては、不適切な事態が生じているのも想像に難くないでしょう。
衛生委員会で審議していない、ストレスチェックの実施規程すらない等はほんの序の口であり、にわかには信じられないような事も行われていると伝え聞きます。

そのような状況ですので、おそらくストレスチェック実施の不備や企業の不適切な行為に気付いた従業員と会社とのトラブルが、今後増えてくるものと想像されます。

 

そんな状況下で高ストレス者面談を行うには、面接医師としてやるべきことをしっかりやっておくことが、労使間のトラブルに面接医師が巻き込まれないようにする上で重要になると思われます。

 

制度について会社の説明不足、本人の理解不足

私は、高ストレス者面談を始める前に、労働者の方に対し、制度の説明と面談後の流れ(企業との情報共有や、就業制限の可能性等)を必ず説明します。なぜなら、厚労省ストレスチェックマニュアルに以下の記載等があるからです。

 

――――

面接指導を行う医師は、面接指導の結果、事業者に意見を述べる必要があります。ここに至るまでに、その旨は既に労働者に説明がなされていますが、面接指導開始時にもあらためて、面接指導制度の仕組みを説明し、対象者の理解を確認しておきましょう。

――――

 

すると、意外にも、企業の説明不足なのか、本人の理解不足なのかはわかりませんが、

「そんなの知らなかった」
「面談の結果が会社に伝わるのは嫌だ」
「就業制限になったら、たまったもんじゃない」

と仰る方が、結構いらっしゃいます。
不利益取り扱いは禁止されているのですよと伝えても「絶対にないと保障できるのか?」と切り返されると、反論のしようがありません。なぜなら、不利益取り扱いの可能性が否定できないがゆえに、わざわざ法律で禁止されているのですから…。
「先生は医師免許を持っているから安泰だが、我々は違うんだよ」と、逆にお叱りを受けたケースもありました。

 

そのような方々には、厚労省ストレスチェックQ&Aに

『(会社への情報提供について)事前に了解が得られない場は、法に基づく面接指導は事業者に結果が伝わる仕組みである旨を説明し、本人の了解を得た上で、法に基づく面接指導としてではなく、事業者に伝えないことを前提に、通常の産業保健活動における相談対応として実施することも考えられます。』

とありますので、ストレスチェック制度上の面接希望の申し出を取り下げ、通常の産業医面談に切り替えることもできると説明します。

 

すると、今シーズンの私の経験だけで、多数の高ストレス者の方が面接希望の申し出を取り下げられました。

 

説明なしでの面談は、トラブルのもと

この方がたに、説明なしで面談を実行し企業に面談報告書を提出していたら、トラブルになっていた可能性があったのではないかと思います。「産業医のせいで、会社から残業制限をかけられた」「情報が会社に伝わって、出世に響いた」等と言われかねません。

 

もちろん、面接医師としては、面談結果を会社に情報提供する等は法令にのっとった適切な対応であり、本人が制度の流れを理解せずに高ストレス者面談を希望してきたのは、説明不足の会社又は会社の説明を十分聞いていない本人のせいです。
しかし、トラブル防止のためにも、厚生労働省のストレスチェックマニュアルにもある通り、面接開始前に本人に制度の説明を行った方が良いと言えるでしょう。

なお、このようなトラブル防止のために、面接申出時に本人からしっかりと同意書を取っている企業もある(むしろその方が多い?)ので、同意書の有無を確認するのも重要です。

 

労働者のキャリアと産業医

2016-12-16

キャリアコンサルタント資格とは

皆様は、キャリアコンサルタントという資格が存在することはご存知でしょうか?

キャリアコンサルティングとは、「興味・適性の明確化や職業生活の振り返りを通じて、職業生活設計の支援や職業の選択、スキルアップについて、意欲の向上を促し、自己決定を後押しする支援」のことを言い、これを行う人のことをキャリアコンサルタントと呼びます。

今年4月より、キャリアコンサルタントが国家資格化されました。

弊社代表産業医(山崎)は、先日行われた第1回キャリアコンサルタント試験に合格し、キャリアコンサルタントとして名簿登録を受けましたのでご報告致します。

 

労働者のキャリアと悩み

一昔前と比べ、現在の日本社会においては、労働者が自らのキャリアについて考え、悩むことが多くなっているのではないでしょうか? 

あくまで一般論でしかありませんが、一昔前には、新卒で入社し定年退職するまでの間、時には興味・経験のない部署への異動を命じられ、時には地方への転勤も命じられ、長時間残業で家族との時間が少ないとしても、それらを甘受し、一つの会社で定年まで勤めあげることが一般的でした。ほとんどの人が、それが普通であり、自分にはそれしか道がないのだと思っていたのです。また専業主婦家庭が多かったこともあり、そのような夫の働き方が可能でもありました。 

それに対して、現在の若者は、各種調査でも明らかになっていますが、「仕事のやりがい」や「仕事の意味」を重視する傾向があります。また、共働き家庭も増え、仕事とプライベートの両立を重視する傾向も、年々強まっています

また、転職市場も拡大し、インターネットを通じて様々な情報を得ることができるようになり、「隣の芝生は青い」ならぬ「自分にはもっと合った仕事がある」「この仕事では自分の能力は生かせない」と感じる労働者も増えているのではないでしょうか。

 

産業医面談の中で感じるキャリアに関する悩み

産業医としてメンタル不調になってしまった労働者の方々と面談する機会も多数頂いておりますが、メンタル不調に至った原因として、キャリアに関することが一因となっているケースも多々見受けられます。

以下、ほんの一例ですが、

 

入社直後~数年:

入社前に自分が思い描いていた仕事内容と、実際の内容が大きく違い、やりがいを感じられない。

 

部下を持つようになったタイミング:

自分は、部下のマネジメントができるタイプの人間ではない。役職を外してもらって、あくまで一プレイヤーとして働きたい。

 

子育て期:

毎日毎日深夜まで残業で、子どもと過ごせる時間がない。もっと家庭を大事にしたい。

仕事が忙しく、家事がほとんどできていない。子どもに申し訳ない。

 

中年期:

今まで自分が築いていたキャリアと全く違う分野へ異動となった。会社は自分を辞めさせたいのか?嫌がらせか?

 

50~60代:

親の介護や、自身の病気と、仕事の両立に関する悩み。

 

というような悩みはよく聞かれます。

 

企業によっても傾向に違いがあり、例えば公務員であれば、おそらく民間との癒着防止等の意味合いもあるのでしょうが全く異なる分野への異動というのが結構あり、地位だけ高くて知識・経験が少ない状態に陥り、経験豊富な部下とのコミュニケーションや指導に悩むといったケースが散見されます。

また、歴史のある企業においては、社員の高齢化が進んでおり、自身の病気や親の介護の問題が多く、新興のIT企業等ではそのような病気や介護の問題は少なく、自身のスキルと会社から求められるスキルのミスマッチ(業界自体の変化のスピードが速いため、労働者に求められるものも次々と変化しやすい)が多いように感じます。

 

産業医としてできること

産業医と面談することで、このような悩みが解決するわけではありませんし、私自身解決できる能力があるとも思っていません(時には、労働者と企業の間に立って話を調整し、解決に至ることもありますが…)。 

ただ、キャリア理論に関する知識が全くのゼロよりかは、多少なりとも持ち合わせていた方が、より充実した産業医面談ができるのではないかと考え、今回の国家資格取得に至りました。例えば、「この人が大切にしている価値観はなんなのだろう」「この人のキャリア・アンカーは何だろう」と考えながら産業医面談を行えば、多少は意味のある面談ができるかも知れません。

 

今後も、今回の資格取得の際に学習した内容や経験を活かし、労働者の方々や企業のお役に立てる産業医活動を行っていきたいと考えています。

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