労働者の心身の状態の取扱規程例の公表は?
労働者の心身の状態に関する取扱規程例はいつ出るのか?
来月4月から、改正労基法・安衛法が施行されます。私は産業医をしていて、人事の方々と接する機会も多く、残業時間に関する36協定や有給休暇取得義務化への対応を皆さん着々と進められていますが、産業保健に関する分野はまだ準備途中のところもあります。
特に『労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱い』については、昨年9月に法令に基づいた指針が公表され、その中で情報の『取扱規程』を各社で策定することが求められていますが、ほとんどどこも策定できていません。
その理由として、法・指針の内容を正確に反映した規程を独力で作成するのは、専門性が高く結構難しいということ(←社労士や弁護士に頼んでも、後述の厚労省発表を待ちましょうとなる)と、ストレスチェックが義務化された際も法・指針・実施マニュアルに基づいた『規程例』が厚労省から公表されたので、今回もその公表を待って、それをベースに自分のところに合った規程例を作成した方が良いとの判断があるためです。
昨年9月の段階で、私が知人等(厚労省関係)から得た情報では今年1月中に発表とのことでしたが公表されず、とある人事労務系の雑誌(1月号)で、弁護士の先生が厚労省に問い合わせたところ2月中に公表との記事がありましたので待っていましたが、公表されませんでした。
やむなく昨日、私が厚労省に電話したところ、3月中には公表されるとのお返事を頂きました。
(追記:3月28日に公表されました→こちらの記事を参照)
公表されればすぐに内容検討と衛生委員会での調査審議を!
指針には、以下のように書かれています。
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取扱規程については 、健康確保措置に必要な心身の状態情報の範囲が労働者の業務内容等によって異なり、また事業場の状況に応じて適切に運用されることが重要であることから、 本指針に示す原則を踏まえて、事業場ごとに衛生委員会又は安全衛生委員会を活用して労使関与の下で 、その内容を検討して定め、その運用を図る必要がある。
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つまり、ストレスチェックの時と同じく、厚労省から公表されるのはあくまで一例であり、各社の事情に応じて、内容を変更する必要があります。
公表されてみないとわかりませんが、おそらく、国が公表する規程例では、個人情報保護の面を重視して、なるべく個人情報の共有範囲を狭めるようなものになると思われますので、それをそのまま導入すると、企業で実際に現状行われている共有の方法や範囲とバッティングすることもありうると思われるので要注意です(←どこまで共有するのが絶対的に正しい方法かという話ではなく、指針にも書かれているように『労働者の業務内容等によって異なる』『事業場の状況に応じて』という面があるので、厚労省の規程をそのまま丸パクリすると、現状のやり方が規程違反になり、うまく行かないケースが生じるかもしれないということです)。
また、個人情報は基本的に労働者のものですので、それをどう取り扱うか決めるには『労使関与の下で』決めるということが非常に重要であり、衛生委員会を通すこともマストです。使用者のみで勝手に決めていると、個人情報に関する意識が高まっている今般の時世においては、労働者側のクレームに後々繋がりかねません。
このように、色々と検討すべきこともあるので、3月中に公表されても、内容を精査・調整して、基本的に月1回しかない衛生委員会で調査審議して、4月からの施行に間に合わせるのって、実質不可能やんか!?と思ってしまうのは私だけでしょうか……。
私が産業医をする中では、この「心身の情報の取扱い」は、結構重要な事柄ではないかと思うのですが、厚労省もあまり重視していないのかも知れません。または、重要とは考えているものの、規程例の公表は国の義務でも何でもないので、統計問題で今はそれどころではなく後回しになっているのでしょうか。
いずれにせよ、規程例が公表されたら、また中身を検討したいと思います。