Author Archive

休職者との接触と職場復帰支援プログラム

2016-02-24

先日(平成28年2月23日)京都地裁にて、大手下着メーカーとその元社員の労使紛争に対する判決が出され、大きくニュース報道されていました(W社事件 京都地裁 平成28年2月23日判決)。
就職人気ランキングでも特に女性からは非常に人気があり上位にランクし、2016年経済産業省選定の『健康経営銘柄』にも選ばれている企業が、一部敗訴しており、注目を集めたものと思われます。

 ニュースの内容から読み取れる事件の概要は以下の通りです。(判決文を見ていませんので、内容が正しいか・正確かどうかは分かりません。判決文が入手できたら、またこのブログでも詳細に検討してみたいと思います。)

 ・40代契約社員の女性。下着売り場で店長をしていたが、売り上げが落ちたこと等から急性ストレス反応となり、平成22年10月から休職。

・女性は会社に対し、売り場の改善や試し出勤から始めて職場復帰すること等を求めたが、会社は同年12月31日付で雇用契約を打ち切った。その後、女性は重度のうつ病を発症した。

・女性側としては、「職場復帰支援プログラム」がなかったこと及び「医師から直接の接触を止められていた上司が女性と面談したこと」が安全配慮義務違反となる等と主張し、約2260万円の請求をした。

 裁判所の判断

職場復帰支援プログラムを策定し、実施することが望ましい対応だったが、順守する法的義務とまでは認められず、安全配慮義務違反とは言えない。
一方、医師から直接の接触を止められていたにもかかわらず、上司が女性と面談したことは精神障害に悪影響を与えており安全配慮義務違反にあたる。会社は女性に110万円の損害賠償を支払え。

職場復帰支援プログラムが争点に 

まず何より、病気になられたこの女性の一日も早いご回復をお祈り申しあげます。

 私がこのニュースを見て、珍しい・興味深いと感じたのは、「職場復帰支援プログラム」がなかったことが争点になっている点です。支援プログラムがないことが、安全配慮義務違反となるという労働者側の主張は、私の知っている範囲の過去の労働判例の中では、あまりないように思います。もっとも、本件において、「支援プログラムがない」というのが具体的に何を示しているのかは判決文を読まないとわかりませんが…(つまり、プログラムを定めた文書規程がないだけで、支援自体はしっかりされていたのか、又は、支援自体が欠けていたのか。支援自体が欠けていたとして、それは、産業医面談がなかったのか、半日勤務・試し出勤制度がなかったことを問題にしているのか等)。 

では、どの程度の支援プログラムがあればよいのか、私が考える必要最低限の内容は以下の3点です。

①    体調に配慮しつつ、休職中の本人と定期的に連絡を取り、病状等を確認する。放置はしない(体調に応じて、距離を取ることは必要)。

②    復職前には主治医からの診断書・意見書を提出させ、その上で産業医面談を行い、産業医から復帰の可否や復帰後に必要な就業上の配慮を会社が聴取する。

③    復帰後も3か月程度は、月に1回以上産業医面談を受けさせ、現在の配慮で問題なく働けるかを確認する。その結果を職場にフィードバックし、再発なく働けるよう支援する。再発のリスクがあるようなら、就業継続の可否を含めて再検討する。

 

少なくとのこの3点は必要であろうと思われます。また逆に、この3点をしっかり行っていれば、裁判所から「職場復帰支援がない」とまでは言われないのではないかと思います。 

これらを行っていくうえで重要な役割を果たすのが産業医です。②③には産業医の関与が必須ですし、場合によっては①にも産業医が関わることが考えられます。

逆に言うと、②③をしっかり行えない産業医を雇っていることはそれ自体が労使紛争リスクであるということです。

 

主治医の診断書や意見を軽んじてはいけない

本件においては、『医師から直接の接触を止められていたにもかかわらず、上司が女性と面談したこと』が安全配慮義務違反となっています。判決文を読まないとわかりませんが、この女性従業員は職場復帰はしていないようなので、休職中に女性と上司で何らかの話し合い等の接触があったものと想像できます。なぜ、そのような事態が生じたのか、可能性としては2つ考えられるように思います。(「医師」というのが主治医なのか会社の産業医なのか分かりませんが、とりあえず主治医の前提で書きます。) 

一つ目は、主治医から「直接接触は止めて」と診断書・意見が会社に出ていたが、社内(人事↔上司等の然るべき範囲内)でその情報が共有されておらず、上司が面談してしまった可能性です。もしそうであれば人事↔上司間の連携不足としか言えず、この事件を機に、共有できる体制を構築していくしかありません。
私が体験した過去のケースでは、従業員から上司に診断書が出されても、上司から人事担当者等に報告を上げる体制ができておらず、上司のところで診断書がストップしており、人事も産業医も知り得ないメンタル不調者がなんら配慮もなく体調不良のまま働いているといったこともありました。このような状態は、かなりリスキーであり、早急に改善する必要があります。

 二つ目は、「直接接触は止めて」との主治医の診断書を、上司・会社(人事)が認識しつつも軽んじた可能性です。主治医の意見を軽んじると、訴訟等になった場合、本件のように会社は痛い目に会ってしまいます。なぜなら、医師の診断書というのは、社会的に公共性の高い役割を担うべき(少なくとも裁判所はそう考えている)医師が作成した、正式な文書だからです。会社の独断で、無視・軽視してはいけません。

一方で、主治医の診断書に盲目的に従う必要まではありません。厚労省も職場復帰の手引きにおいて、「主治医の診断書には、労働者や家族の希望が含まれている場合もあるので注意が必要」と認めているところです。
主治医の診断書の内容に疑義がある場合は、企業が独断で無視・軽視するのではなく、産業医の意見を聴取したり、産業医を通じて主治医に問い合わせる等の対応が必ず必要になります。

 

もっとも、産業医がちゃんと機能していない(メンタル対応が不得意であったり、最悪名義貸しで職場訪問すらしていない等)場合は、「会社の独断」でやるしか方法はありません。
しっかり会社に対し適切な意見をしてくれる産業医」、「主治医と連絡・連携をとってくれる産業医」を確保することが、安全配慮義務を履行する上でも非常に重要になることが分かるかと思います。

 

企業が、医師の診断書・意見書に接する機会は今後ますます増える

ストレスチェック制度も始まり、今後、企業が「医師の意見書」に接する機会はかなり増えてくると思われます。どんな意見書が出てきても、コンプライアンスを遵守し、安全配慮義務違反とならない対応を取れるよう、産業医をはじめとした社内体制をしっかり構築しましょう。

少しの気遣い、労使相互の理解で、避けられる労使紛争もあるかも知れない

本件においても、会社側が医師の意見に従って、休職者に対し上司ではなく他の人事労務担当者等が対応すれば、裁判で負けることはなかったのかも知れません(繰り返しになりますが判決文を読んでいないため正確なところは分かりません)。そのようなちょっとした対応のまずさ故に敗訴し、企業名が大々的に報道されてしまうことは、企業イメージの低下による売上げ減少、人材採用困難、社内のモチベーション低下に繋がりかねません。また、従業員と争うことは、会社としても決して本意ではなく、できれば避けたいところでしょう。

病気のご本人にとっても、会社と訴訟し続けることは大きな精神的負担になり、病気の回復を遅らせる要因になってしまうかも知れません。もちろん訴訟を起こし白黒付けないと気が済まない、前へ進めない、会社が許せないとの気持ちがあるのも否定しません。

産業医がどこまで力になれるか分かりませんが、私としては、精神科医としての経験、産業医としての経験、特定社労士としての法的知識を生かして、労使関係のより良い調和やお互い疲弊する労使紛争の未然回避のために少しでもお役に立てればと思いながら、日々活動しています。

【不調者対応の基本】疾病性と事例性について

2016-02-17

甘利元大臣が睡眠障害で自宅療養が必要になったため、国会を欠席しているという報道がされています。一日も早いご回復をお祈り申し上げます。

 これに対し、民主党の中川氏が「いよいよ、攻勢をかけていく時だと思う。総理の睡眠障害を勝ち取りましょう」と発言し問題となっています。睡眠障害で悩んでいる方々は社会に多くおられ、そのような発言は不適切なのではないかとの批判が出ています。

 中川氏の本心は知る由もありませんが、もしかすると、甘利氏の自宅療養は「ほとぼりが冷めるまでの雲隠れ」ではないかとの疑念があり、安倍総理に対しても、雲隠れしたくなる程に厳しく問題点を追及していこうとの趣旨で発言されたのかも知れません。そうだとしても、睡眠障害で苦しんでいる方々に対し、配慮に欠ける発言であることは事実だと思います。

 「甘利氏は本当に病気なの?雲隠れじゃないの?」という思いが根底にあるがゆえに、このような失言に繋がったのではないでしょうか?仮に、甘利氏がストレスのため胃潰瘍になり国会での活動中にTVカメラの前で吐血して救急車で運ばれた場合には、中川氏も「安倍総理にも攻勢をかけて、国会での吐血を勝ち取りましょう」とはさすがに言わないと思います。

 

事例性と疾病性

上記の政治の話は、100%私の勝手な想像ですので、ここからが本題です。

一般の職場においても、医師の診断書が出た以上は、本当に病気かどうかを疑うのは適切でなく、「病気である。そして、好きで病気になる人はいない。本人も苦しんでいる。」という考えをベースにして対応すべきです。特にメンタル不調の場合で、人事担当者や上司が「本当に病気なの?病気に逃げているんじゃないの?」と疑っているケースも時々見かけますが、そのような疑念は自分の内心のみに留めるべきであり、本人に対し「病気じゃなくて、甘えだ」などと言ってしまってはトラブルに繋がりかねません。

診断書が出た以上は、あくまで病気(疾病)として対応しましょう。

 

事例性を中心に考える

そうは言っても、会社は何も言えない訳ではなく、会社がメンタル不調者との間で主に問題とすべきなのは「事例性」です。事例性とは、「遅刻している」「欠勤が多い」「業務の効率が著しく落ちている」「周囲との協調性がない」等の客観的事実のことを言います。

職場にメンタル不調者(又はメンタル不調が疑われる人)がいる場合、「病気かどうか。病状は良いか悪いか」という疾病性ではなく、事例性に注目するとスムーズに対応できます。

 なぜ、疾病性ではうまく対応できないかというと、医者ではない医療の素人である上司が、部下に対し「病気だろうから産業医のところに行ってこい!」とか「病状が悪いから休め!」と言うと、「何で医療の素人の上司に、病気だと決めつけられるんだ」、「病状が悪いとか、一方的に決めつけられたくないわ」との反発が部下に生じ、受診拒否やトラブルになりかねないからです。

 事例性に注目して対応すれば、まず上司は部下に対し、「最近遅刻が多いけど、どうしたの?」「ミスが増えているようだけど大丈夫?」と聞くことになります。そこで本人が「最近、なかなか寝付けなくて、朝起きられず遅刻してしまいます」、「頭がボーっとして集中できないんです」と言えば、そこで初めて「もしかしたら病気かもしれないから、産業医にみてもらってはどうか」等と、医療に繋げて医者に疾病性を判断してもらえば良いのです。

 

本人が受診拒否した場合

本人が、病気の可能性を強く否定して医者に会うことを拒否した場合は、しばらく様子を見た上で、それでも遅刻・欠勤(事例性)が続いた場合は、「遅刻・欠勤が多くて職場も困っている。遅刻・欠勤が病気によるものではないと君は言うが、万一病気によるのもではあってはいけないので、念のために医療のプロである産業医の面談を受けてくれ」と勧めて、医療に繋げます。それでも正当な理由なく拒否する場合には、病識のない精神疾患も存在しますので産業医等と相談しながら慎重な対応が必要にはなりますが、「病気ではない勤怠不良」として指導・懲戒の対象にせざるを得ない場合もあるでしょう。

 

このように、疾病性と事例性を分けて考える視点は、職場で生じた健康問題に対応する際には非常に重要です。まず、事例性を入り口にして対応し、疾病性については人事・上司が独断で判断せず医療職に任せることをお勧めします。

ストレスチェックQ&Aが更新されました

2016-02-08

厚生労働省がストレスチェックQ&Aを公表し過去に何度か更新されていますが、先週最新版に更新されました。

ストレスチェック制度が既に開始された後での更新となり、見逃してしまいがちですが、しっかりチェックするようにしましょう。

今回の更新では、新たなQ&Aが3つ追加され、過去に既に公表された回答の一つが修正されています。

具体的にどう更新・修正されたかは厚労省のHPを見て頂くとして、この記事では、変更点に関する注意点をいくつか書いてみたいと思います。

 

①    ストレスチェック社内規程における、実施者等の表記方法

社内規程には、ストレスチェック制度の実施体制を定めるようになっていますが、その表記の仕方として、『実施者:○○事業場 産業医』のように、職名等で特定することが可能な場合は必ずしも個人の氏名まで記載する必要はないとのQ&Aが追加されました。

ストレスチェックマニュアルの中には、『実施代表者:○○ ○○(当社産業医)』という記載例があるため、氏名を具体的に書く必要があり産業医が変わるごとに規定も修正する必要があるのかとの心配もありましたが、そのような心配は不要になりました。

②    「高ストレス者=面接指導対象者」ではありません。絞り込みが必要。

新たなQ&Aの2つ目は、「インターネット上で無料で受けることができるメンタルヘルスに関するチェックでは、安衛法上のストレスチェックをしたことにはならない」というものです。ダメな理由は、実施者が結果を見た上で、高ストレス者が面接指導対象者かどうかを判定しておらず、法定の要件を満たしていないからです。

基本的なことですが、「高ストレス者=面接指導対象者」ではないことに注意しましょう。必ず実施者が結果に目を通して、どの高ストレス者が面接指導対象なのかを判定しなければなりません。

ただ、高ストレス者であるにもかかわらず面接指導対象から外すと判断するには、それなりの理由が必要になりますが、あえて積極的に対象外とする理由もあまりないものと思われますので、実質的には「高ストレス者≒面接指導対象者」となると思われます。絞り込みを行う場合は、必ず合理的な理由が必要になると思われます。

 

③    10人未満の集団設定が絶対NGなわけではない

3つ目の新たなQ&Aは、『10人未満の集団においても、「仕事のストレス判定図」を用いて集団ごとの集計・分析を行うことは可能』というものです。

私が企業様からストレスチェックに関するご相談を受ける際、「10人未満の集団設定は一切できない」と勘違いされているケースもありますが、そのような集団設定が禁止されている訳ではありません。10人未満の場合には、個人が特定されうる分析方法が禁止されているのです。

特定されうる分析方法は、例えば、点数の分布図を出す等です。分布図で、一人だけ極端に点数が悪い人がいた場合、「これはたぶん、あの人じゃないか」と特定されかねませんので、そのような分析は禁止されています。一方で、「単純に平均点のみ出す」といった分析方法は、個人の特定にはつながらないため禁止されていません。

個人的な意見としては、10人未満の部署がある時は、全く業務内容や指揮命令系統の違う他の部署と無理やりくっつけて10人以上にして分析するよりは、平均点等、個人が特定できない方法で分析した方が、職場改善につながりやすいのではないかと思います(もっとも、集団の人数が少ない場合は、ひとり極端に点数が悪い人がいた場合、平均点が大きく下がってしまう等のおそれがありますので注意が必要ですが)。また、平均点を出すような方法であっても2人の集団は不適切(自分以外の人の点数が自動的にわかってしまうため)であり、3人以上にする必要があります。

 

④    ストレスチェックの結果を労基署に報告する際の変更点

Q19-4の厚労省の回答が修正されましたので注意して下さい。

『本社と所在地が異なる事業場において、ストレスチェックを本社の産業医を実施者として実施した場合』、労基署への報告書の「検査を実施した者」の欄は、過去のQ&Aでは3番の「外部委託の医師」として報告するとなっていましたが、今回の修正で、2番の「事業場所属の医師(1 以外の医師に限る。)」で報告するように変更となりましたので注意しましょう。産業医がいない事業場や、居てもストレスチェックに関わることを断られたケース等では、本社の産業医等がカバーすることも十分に想定されますので、今回のこの修正は要チェックです。

なぜ修正されたのかまでは載っていないので修正された理由はわかりませんが、私が勝手に推測するに、厚労省としてはストレスチェック制度を「企業内のリソースで完結できたか」それとも「外部に委託して行ったか」を知りたいのではないでしょうか?本社の産業医ということであれば、一応社内リソースとして2番で報告して欲しいという意味合いでしょうか。

 

以上、簡単に今回の更新に関する注意点を記載しましたが、今後も引き続き更新されるものと思われますので、「こころの耳」等で最新情報をキャッチアップするようにしましょう。

労使紛争における合理的配慮と産業医の役割

2016-02-01

前回の記事からの続きです

 メンタル不調の事例で訴訟になっているケースもある

日本電気事件(東京地裁平成27年7月29日、労働判例1124号)では、労働者側(代理人は労働者側専門労働弁護士の先生)が障害者雇用促進法に基づく合理的配慮を主張しています。この訴訟では、アスペルガー症候群で休職満了、自然退職になったのは不当であると労働者側は主張しましたが認められず、会社が勝訴しています。判決文を読む限りでは休職期間満了・自然退職に向けた手続きにほとんど不備はなく、しっかり証拠も積み上げているように個人的には感じました。

 一方、今年の抱負の記事で、メンタルヘルスに関する今年のトピックス予想でも上げさせて頂きましたが、「合理的配慮義務」が労働者側の主張のひとつとなり得るのだなと再認識しました。

ただ、合理的配慮義務が法制化されたからと言って、企業内のメンタル不調者に対して企業がやるべきことが特段大きく変わるわけではないと思います。特に、今までもすでに、法にのっとり適切にメンタル不調者への対応を行ってきた会社であるほど、特に変わりはないと思います。なぜなら合理的配慮と安全配慮義務は考え方として重なる部分が多いからです。

 

労働者の主張が企業に無理を強いるものであれば、「それはできません」とNOと主張し、法的に求められる可能な範囲の適切な配慮(=合理的配慮)を検討すればよいのは安全配慮義務と同じであり、実際にこの訴訟でも裁判所は「合理的配慮の提供義務も、当事者を規律する労働契約の内容を逸脱する過度な負担を伴う義務を事業主に課するものではない。」「使用者に対し、障害のある労働者のあるがままの状態を、それがどのような状態であろうとも、労務の提供として常に受け入れることまでを要求するものとはいえない。」として、労働者側の主張を退けています。

 

産業医の役割がますます重要になる

このように、「合理的配慮義務」は訴訟の争点になりえますが、「この人にとって、合理的配慮とは何か」を判断するには医学的知識が必要になってきます。どのような配慮が必要か、企業はまずは「主治医」に尋ねることになりますが、主治医の意見を実際の現場での具体的配慮に落とし込んでいくには、「産業医」の意見・役割が重要になってきます。産業医面談や産業医からの意見聴取を経ずに、会社が独断で配慮の内容や本人の病状を決定するのはリスキーです。
(上記の事件においても、会社は産業医に複数回面談を行わせています。産業医が労働者に「日本の総理大臣は誰か」「会社の代表取締役社長は誰か」の質問をしたが答えられず、その次の面談時にも同様の質問をするも調べることなくわからないと答えたことについて、裁判所が労働者の社会性の欠如を認定する上での証拠の一つとなっています。もっとも、産業医だからこそできた質問・評価という訳ではないですが…。)

 

また、その労働者の要望や主治医意見を、企業は受け入れることが可能なのか・受け入れるべきなのか判断するには労働法の知識も必要です。上記の事件において、主治医は「対人交渉が乏しい部署、パソコンに一日中向き合うような仕事において復職可能」と診断書を書いていますが、会社側は片山組事件の最高裁判決等に基づいて、復職可能性について丁寧に検討し証拠を重ねた上で復職を認めなかったため、結果的に勝訴できています。

 

このように、メンタル不調のケースは、安全配慮義務違反、合理的配慮義務違反と背中合わせであり、医学的知識と労働法的知識の両方がないと適切に対応することは不可能です。企業は産業医・弁護士等の意見を聞きながら、コンプライアンスを守り、うまくリスクマネジメントしていくことが求められます。

メンタルヘルスの新キーワード 「合理的配慮」とは?

2016-01-25

改正障害者雇用促進法が4月から施行されます

改正障害者雇用促進法が今年4月から施行されます。企業で働くメンタル不調者への配慮に関係してくる条文(36条の3)から以下に一部抜き出します。

『事業主は、障害者である労働者について、……障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならないただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。』

 

障害者の定義・範囲

障害者という言葉からは、一般的には、足が不自由な方(身体障害者)であったり、知的障害者の方を指すように考えがちですが、この法律の「障害者」の範囲はさらに広い概念です。具体的には『差別禁止や合理的配慮の提供の対象となる障害者は障害者雇用促進法第2条第1号に掲げる障害者(身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者)である』を言います。

つまり、うつ病等のメンタル不調のため、休職や復職を繰り返している人は、『長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者』に該当し、この法律による合理的配慮の対象となる可能性があります。障害者雇用率のカウント(カウントには障害者手帳等が必要)とは異なりかなり広い概念となりますので注意が必要です

 

合理的配慮の中身

会社は障害者に対し、過度の負担にならない範囲で合理的配慮を行う必要がありますが、どこまで配慮しなければならないのかは難しい問題です。

例えば、肢が不自由な労働者に対し、会社入り口の数段の階段にスロープを付けてバリアフリーにする等は合理的配慮義務の範疇でしょう。

一方で、うつ病の社員の方が、体調が悪い場合にいつでも気兼ねなくいくらでも休めるよう社内に自分専用の個室を設けるよう会社に要求してきた場合はどうでしょうか。従業員に対し、「就業時間中でも好きなだけ休んでも良い。個人の仮眠室を作る。」と認めることは、大抵の場合企業にとって過度の負担になるでしょうから、そこまでの配慮はできないと断っても良いと思われます。ただし、法律上、断るだけではだめで、会社と労働者で話し合いどのような配慮なら可能なのかを考えていく必要があります(例えばこのケースであれば、個室は無理だが、昼休みに静かに休める共用のスペースを用意する等)。

 合理的配慮の中身を考えるには医学的知識と労働法的知識が必須

上記の二つの例は、極端なわかりやすい事例ですので容易に結論を出せますが、企業で生じる実際のケースはもっと複雑で判断に困るケースが少なくありません。特にメンタルヘルス不調は、外部から症状などが見えにくい等の理由から、判断が非常に難しくなります。厚生労働省から合理的配慮指針が出ていますが、そこに示されている配慮例は「出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること」「できるだけ静かな場所で休憩できるようにすること」などの当たり障りのない当たり前の内容しか書かれておらず、実際のケースを解決するには一定の参考にはなりますが、全てのケースに対応できるわけではありません。

適切に合理的配慮の内容を確定するには、医学的知識と労働法の知識が必要になってきますが、その際に企業にとって役に立つのが産業医であり、社労士や顧問弁護士になります。

労使紛争における合理的配慮と産業医の役割】へ続く

 

健康診断を確実に受けさせましょう~軽井沢のバス事件に思う~

2016-01-15

連日大きく報道されていますが、軽井沢町のスキーバス事故で14人の方がお亡くなりになり、多数の方が負傷されました。お亡くなりになった方の無念、ご家族のお気持ちを思うと、いたたまれない気持ちでいっぱいです。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。また、負傷された方々の一日も早いご回復をお祈り申しあげます。

 

健康診断を受けさせることは企業の義務です

報道によると、バス会社は労働安全衛生法で定められた健康診断を運転手に受けさせていなかった等の理由で、国土交通省から事故の2日前に道路運送法に基づく行政処分を受けていたとのことです。

労働者に対して年に1回(一定の有害業務従事者等については6か月に1回)健康診断を受けさせるのは企業の義務となっています。

定期健康診断に関する厚労省の調査によると、定期健康診断を実施している事業場(労働者が実際に受けているかどうかは別問題)の割合は、50人以上の事業場においては98%程度と高い数値になっていますが、30人未満の小規模の事業場においては90%、つまり10社に1社は健康診断の機会すら労働者に与えていない状況です。小規模の会社にとっては健診費用が捻出できない等の理由があろうかと思いますが、だからといって健診を受けさせないことが許されるはずはなく、今回の事故のようなことが起これば企業の存亡に直結する大事態となります。かならず健診を受ける機会を労働者に提供しましょう。

一方、受診率(健診を実施している企業の中で、労働者が実際にどれくらい受けたか)を見ると、1000人以上の超大規模の事業場でも85%程度となっています。つまり、会社が健診を受ける機会を用意しても何らかの理由で10人に1~2人は受けていない訳です。企業からすると、「健診を受ける機会は与えている。それなのに受けないのは労働者の勝手であり、会社としての責任は果たしている」と思われるかもしれませんが、万一健診を受けていない労働者が事故を起こした場合、そのような言い訳は通用しません。なぜなら、安衛法上企業に求められているのは「健診を受けさせること」であり、健診を受けない労働者に対しては、何度も勧奨して無理にでも受けさせなければならないのです

 

健康診断を受けることは労働者の義務です

一方、少し意外かもしれませんが、安衛法では労働者にも「健診を受ける義務」を負わせています。よって、企業は健診を受けない労働者に対し、「健診を受けろ!」と業務命令として命じることができるのです。裁判例では、受診拒否に対しては懲戒処分を行うことすら認められています(なお、ストレスチェック制度では労働者に受検義務はありませんので注意して下さい)。よって企業としては「労働者が自分の意思で受けなかったので放っておきました」では済まされず、万一今回のような事故が起きれば企業責任を問われることは不可避です

 

健診を受けさせるだけでは不十分。結果を産業医等にチェックさせましょう

もう一つ気を付けて頂きたいのは、健診を受けさせるだけでは不十分だということです。

健診の結果、異常所見が見られた場合は、企業は就業上の措置について、3か月以内に医師の意見を聴かなければなりません。私が産業医活動を行う中で見聞きしたなかには、産業医が名義貸しである等の理由で、健診だけ受けさせて結果を産業医等にも見せていないケースがままありますが、明らかな安衛法違反であり、今回のような事故が起きれば、これも大問題になりかねません。

必ず、産業医又は産業医がいない場合は地域産業保健センター等に相談し、医師のチェックを入れるようにして下さい。

 

健康診断を行う、労働者に受けさせる、そして結果を医師に見させて意見をもらうことは、健康管理の基本中の基本であり、それすらできていない場合は何らかの事故等が起きると大問題に繋がります。これら一連の健診の流れは、確実に実施することを強くお勧めします。

病院・医療機関におけるストレスチェック体制構築の難しさ

2016-01-11

ナーシングビジネス2016年9月号にも、病院のストレスチェックについて詳しい記事を寄稿しております。そちらも併せてご覧いただければ幸いです。

病院・医療機関は意外に従業員数が多く、ストレスチェックの対象となる

病院は、入院患者様がおられる場合は24時間体制であり、看護師さん等も交代勤務であったり、その他のコメディカルや事務職員の方、パートの方もおられるので、従業員数が50人以上の病院というのは結構多く存在します。

病院の医師が産業医を兼任している場合がある

従業員数が50人以上であれば産業医を選任しなければならない訳ですが、その場合、その病院の医師を産業医として選任しているケースがあります。中には、病院長自身が産業医をしている場合もあります。

病院長が産業医を兼任するのは適切ではないことは、昨年10月に厚生労働省から通達(基安発1030第4号)が出されました(3月8日追記:2017年4月より、病院長等の管理者が産業医を兼任することは、省令で禁止される運びとなりました)。適切ではない理由としては、「労働者の健康管理よりも事業経営上の利益を優先する観点から、産業医としての職務が適切に遂行されないおそれも考えられる」などの理由が挙げられています。

この趣旨から考えると、診療科の部長等も経営者側になりますので、避けたほうが良いと思われます。(ストレスチェックとの関係では、人事権があるため実施者にはなれません。)

 

病院の産業医がストレスチェックにかかわる場合

「管理職ではないヒラの医師」が自分の所属する病院の産業医となり、ストレスチェックにもかかわることになった場合、その医師への心理的負担が大きいように思いますし、その他の従業員もあまりよい気がしないなど、問題点が多いように思われます。

なぜなら、その医師がストレスチェックの実施者・高ストレス者への面接担当である場合、

①    その産業医は、一緒に働く医師・看護師などの全ての従業員のストレスの状態をチェックし、誰がストレスが高いのかをすべて把握しなければならないが、守秘義務があるのでそれはすべて自分の心の内にしまい漏らすことがないよう気を付けながら、毎日を過ごさなければならない。

②    一緒に働く同僚・コメディカルから、「あの先生は、自分のストレス具合を知っているんだ」という目で見られるかも知れない。

③    そのような状況では、従業員が正直にストレスチェックに答えず、適切な職場改善につながらないかも知れない。

④    高ストレス者が医師面接を希望した場合、その人の悩み等を聴いて、受け止めつつ、面談後も同じ職場で一緒に働き続けなければならない。そして場合によっては事業者(病院長等)へ意見を述べなければならないが、医師としての大先輩である病院長に、職場を改善するよう意見するのは中々難しいかも知れない。一方、高ストレス者からすると、一緒に働く医師には職場の悩みを打ち明けにくい場合がある。

少し考えただけでも、上記のような問題点が予想されます。もし私が自分の働く病院で産業医に任命され、ストレスチェックにもかかわるよう命じられたら、まさにそれ自体が強度のストレスとなって病気になってしまいそうです。

 病院・医療機関においてはストレスチェック外部委託を検討すべき

そんなわけですので、私見になりますが、病院においてはストレスチェックを外部委託したほうが良いように思います。自分の所の医師に病院の産業医を兼任させている場合は、実施者業務、高ストレス者への医師面接も外部委託したほうが良いのではないかと思います。または、病院外部の医師に産業医をお任せし、その産業医にストレスチェックにかかわってもらうかでしょう。

弊社では医療機関における産業医やストレスチェック実施者・面接指導も受託実績がございますので、お気軽にお問い合わせください。

メンタルヘルスに関する今年の予想&弊社の抱負

2016-01-05

新年あけましておめでとうございます。

 弊社を設立し初めての年始を迎えたわけですが、昨年は会社設立後3か月程の間に、ありがたいことに多数の企業様とご縁を頂きました。

今年の弊社の抱負は

『お仕事を頂いた企業様に、企業様の期待を超える産業医サービスを提供する』

としました。

企業様が産業医に何を求めるかは、企業様によって本当に様々です。ご縁を頂いた企業様と真摯に向き合って、企業様が何を求めているかを感じ取りしっかりとそれにお答えしながら、その上でさらにその期待を超える産業医活動をご提供できればと考えております。
弊社に産業医を頼んで良かったとご満足頂けるよう、努力を重ねて参る所存です。

本年もよろしくお願い致します。

 

メンタルヘルス不調者への配慮が問われる年

さて、冒頭にあります「メンタルヘルスに関する今年の予想」ですが、私の予想では企業が行うべきメンタル不調者への配慮が、より具体的にシビアに問われる年になるのではないかと思います。その理由としては

①    ストレスチェック後の高ストレス者への配慮

②    今年4月施行の改正障害者雇用促進法による合理的配慮(「障害者」の範囲が広く定義されているため注意が必要です)

の2つの配慮が企業には求められるようになるからです。

 

配慮を決定する上での産業医の重要性

この2つの配慮を行う上で、企業は産業医等に意見を聞かざるを得ません。なぜなら、企業は基本的には医学の素人であり、医師の意見を聞かず独断でどのような配慮を行うかを決定することは非常にリスキーであり、またリスク以前の問題として、発達障害等、企業からするとどのような配慮をすれば良いかわからないケースも多数存在するからです。

 36協定の上限を超えて時間外労働をさせた企業が送検されて大きなニュースになったり、外食企業の過労死訴訟で企業が多額の和解金を支払い、改善対策を約束して世間に公表し謝罪する等、労働者の健康に対する配慮がますます企業に求められる時代になりつつあります。

そのような時代において、産業医が果たすべき役割・責任は益々大きくなっていくと予想されますが、名義貸しや片手間で産業医をやっている医師では対応できなくなり、産業医の淘汰が始まるのではないかと考えられます。また、それを見越してしっかり働いてくれる優秀な産業医を確保することが企業には求められます。

 

(②の合理的配慮については後日記事をアップする予定です。)

 

ストレスチェックセミナーのお知らせ~精神科産業医として講演します~

2015-12-30

来る平成28年2月16日,大阪産業創造館で行われるストレスチェックセミナーにて,主催者の方からご依頼を頂き弊社代表産業医が講師を務めさせて頂くことになりました。

セミナーのパンフレットがこちらにアップされていますので,興味のある方は是非ご参加下さい。

 精神科産業医としてセミナーでお話しします

以前から当ホームページでも繰り返し述べていますが,ストレスチェック制度をしっかりと運用し,企業にとって意味のあるものにするためには,

①法・指針・マニュアル等に沿って,適切な実施体制を整える

②集団分析をして組織改善までつなげる

③高ストレス者への医師面接を適切に行うための産業医・精神科医を確保する

 以上の3点が重要です。

 

本セミナーでは①の部分について社労士の先生,②の部分について以前より組織改善に携わってきたEAPの先生,③の部分について私がお話しします。

3つの分野の専門家が一堂に集まって,それぞれの経験を踏まえてお話しするセミナーはあまりないのではないかと思います。

 

ストレスチェック実施後の産業医活用のポイント

私は,『ストレスチェック実施後の産業医活用のポイント』のタイトルでお話しさせて頂く予定です。こちらの記事にも書いている通り,ストレスチェック制度においては『しっかり企業と連携しながら面接してくれる産業医・精神科医を確保すること』が非常に重要になり,また実際に企業様も頭を悩ませておられる所ですので,その辺りの話を深く掘り下げてお話しさせて頂こうと考えています。

 

みなさまの参加のお申し込みをお待ちしております!(申込みには,パンフレットの参加申込書をご利用下さい)

【コラム】派遣社員とメンタルヘルス・安全配慮義務 ~産業医の視点から~

2015-12-22

労働者派遣法改正と今後

今年の9月に改正労働者派遣法が施行されました。私は「派遣,有期労働契約」の分野の知識が弱いと自覚していたので,ある大手派遣会社主催の法改正対応セミナーに行って勉強してきました(「弁護士の先生の法改正解説講座」+「派遣会社の自社宣伝を兼ねた解説」)。

 その派遣会社の話によると,『個人単位でも3年の縛りがかかり,基本的に同じ部署では3年以上働けない。但し,派遣社員と派遣元の関係が無期雇用契約ならそのような縛りはない』ため,ある程度経験や技能の蓄積が必要な業務に同じ派遣社員を長期的に使いたい企業は,派遣元と無期契約をしている派遣社員を求める傾向になるだろうとのことでした。その結果,派遣の業界は,派遣社員と無期契約をできる体力のある派遣会社が生き残っていくだろうとのことでした(宣伝も兼ねて多少自社に有利なように解説しているとは思いますが)。

 派遣社員について,どのような法規制をするのが良いのかは,労働法学者でも政治家でもない私には正直わかりません。ただ,労働者派遣という形態が,今後も当面は社会の中で存在し続けることは確実であり,また,産業界のスムーズな労働力移動(人が余っている業界から,急成長で人が足りない業界へ)のためには,政府としても,派遣社員と派遣元とを無期雇用にすることで雇用を安定させスキルアップの機会を確保しつつ,派遣社員を活用するという方策も考えられると思われます。

 そこで今回は,私が産業医業務を行ってきた中で感じた,派遣労働者への健康管理・安全配慮義務履行の難しさについて書いてみたいと思います。

派遣社員の健康管理の問題点

 派遣先,派遣元の責任所在があいまいになりがち

派遣社員の健康管理については,労働者派遣法や労働基準法等にて派遣元,派遣先に責任が割り振られています。例えば,一般健康診断や過重労働面談を行うのは派遣元の義務ですが,特殊健診等は派遣先の義務となります。

また,派遣先と派遣元が共同で行うべき事項もあり,判例上,安全配慮義務については双方が負うとされることが多いです。

『双方が負う』というのが,双方ともにしっかりやってくれれば良いのですが,場合によっては派遣先から見ると「ウチの従業員じゃないし」となり,派遣元から見ると「向こうで働いているからウチの責任じゃない」となってしまうこともあります。

長時間労働やメンタルヘルスの問題が社会的に注目される昨今,派遣先と派遣元がより緊密に連携して派遣労働者の健康管理を行う必要があると思われます。

 派遣社員が相談窓口に相談しにくい

派遣先で長時間労働をさせられメンタル不調になりかかっているものの,有期契約という不安定な立場等の理由から,派遣労働者が派遣元に相談できないケースもあるようです。派遣先は,派遣元からするとお客様な訳で,その間に立つ派遣労働者は双方に気を使わなければならない立場になることもあります。

派遣元,派遣先は,そのような労働者の立場も汲んで,相談しやすい体制を作らなければなりません。そのような体制を作らず,万一労働者がメンタル不調から自殺してしまった場合,派遣元・派遣先が連帯して安全配慮義務違反となってしまうからです。

派遣社員の業務や責任が過重な場合がある

派遣社員が優秀で技能も高い場合は,普通は派遣社員が行わないような高度の仕事を任され,また,派遣先の正社員を何人も部下として持つケースもあります。そのような場合でも,あくまで派遣社員は外部の人間であるため,派遣先の責任者・上司とのコミュニケーションが取りづらく,一人で責任を負って孤立してしまうケースもあるようです。派遣元企業が派遣先企業としっかり交渉し,業務範囲・責任が無制限に拡大しないようにする等の対応が必要ではないかと個人的には思います。

 

派遣業界で求められる産業医のスキル

このように派遣労働者は,派遣元と派遣先との二重の関係を持つが故に,健康管理が難しくなっています。それに携わる産業医も,通常の雇用関係とは違ったスキルが求められるように思います。

①労働者派遣法等の知識

法律や判例を知らず「派遣元には責任はない」等のトンチンカンなことを言ってはいけませんので,派遣関連の法律・判例の知識は産業医活動をする上で必須です。

②派遣労働者の労働環境を想像する力

派遣元企業の産業医が,そこの労働者を面談するにしても,各労働者が働いている環境は全くバラバラなわけです。Aさんはα社で,Bさんはβ社で働いているといった感じですが,産業医はα社にもβ社にも行ったことはありません。そこで,産業医に求められる能力としては,面談を通じてその人の働く環境を素早く把握し想像することが必要になってきます。これをするには,過去の多職種での産業医経験や,書籍・報道等を通じて得る各業界の知識が必要になると思います。

③派遣元の人事労務担当者との調整力

ある労働者の方に対し何らかの就業上の配慮が必要と産業医が考えたとしても,産業医が派遣先に出向いて行って,派遣先の上司等に会って直接意見を言うようなことはありえません。派遣先に伝えるのはあくまで,派遣元企業の担当者の仕事になります。

よって産業医としては,産業医意見がしっかり相手(派遣先企業)にまで正確に齟齬なく伝わるよう,産業医と派遣元担当者との打ち合わせ・コミュニケーションにはかなり気を使います。

 

弊社は,派遣先・派遣元企業の両方で豊富な産業医経験を有しております。産業医をお探しの場合は,是非一度弊社までお声かけ下さい。

« Older Entries Newer Entries »
【大阪本社】〒532-0011 大阪市淀川区西中島3-7-13 NLCサクセスビルイースト3階
【東京オフィス】〒104-0061 東京都中央区銀座6-13-9 GIRAC GINZA8F
Copyright(c) 2019 アセッサ産業医パートナーズ株式会社 All Rights Reserved.